原初の章

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床に転がるように意識を落としていたハクが瞼を持ち上げると、優雅に椅子に腰かけた男が居た


「ベッドで眠ればいいものを」


女官に言われていたが、冷たい床で過ごしていたことに慣れていたハクは、そのまま眠ってしまっていた


「眠れないのなら、私と話さないか?」


ハクは腰をあげると、金の瞳に引かれるように用意されている椅子につく


「…私は、お前の持つ考えに興味を持っている。だが、お前はあまり口を開かん。どうしてだ?」


これも応えないのだろうかと、ヒュプノスが紅茶を嗜み終わると、ハクは視線を上げる


「…多く口にすると、反感を買うだけだから。必要最低限の返事だけを返すのが一番、楽だと学んだ。それに体力を使わなくて済む」


余計なことまで言うと相手に口答えしているように思われ、逆に応えなければ容赦なしの痛み

体力が衰退していたのもあったが、それが最も効率が良いのだと長いこと経験していく内に学んでいた



「その傷を与えた者達から学んだことか」



手形の残った細い首にヒュプノスの指が伸び、その痕に重ねるように肌を撫でる

その行為に小さな痛みが奔ったがハクが表情を変えることはなく、代わりにヒュプノスが口元に笑みを浮かべた


「だが、その考えは畏れたからではないのか?」

「どうでもいいよ。それが畏れで選んだ道でも、私にとって最良の道だったから」


子供にしては抑揚のなく、冷めた物言い

弱みを隠す素ぶりもしない子供は、やはり地上に住む人間とは違う


「やはり面白いな、ハク。だがそれでいい。私の前ではお前の思うがまま話せ」


しっかりと肯定の意志を見せる姿にヒュプノスは満足げにほくそ笑む





一体、どれ程楽しませてくれる隷従だろうか―――




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