LOST CANVASの章
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黄金聖闘士と二人っきりとなったハクは、奥からお茶を淹れてくるとシジフォスに差し出した
それに一つ礼を述べると、ハクが椅子に腰を下ろしたのを確認してからシジフォスはお茶を口にした
「ハク、と呼んだらいいかな?」
「はい。好きに呼んで下さい」
「気楽にしてくれて構わない」
「でも、シジフォスさんは黄金聖闘士で…」
「マニゴルドにも、そんな態度なのか?」
その名が出てきた途端、ハクの顔は渋くなる
「あれは違います。あれは、シジフォスさんと同列じゃないです」
「マニゴルドもずいぶんな言われようだな」
「いいんですよ。あれは蟹で十分です!」
楽しげに瞳を細めている男に訴えるようにハクは唇を尖らせる
教皇セージの弟子で蟹座の黄金聖闘士であるマニゴルドと偶然にも会ったことがあったがその思い出はいいものではない
そんな出逢い、一度でも十分過ぎるというのにセージの使いとしてハクレイの元にやってくる度に皮肉のようにハクの目の前に現れた
「…にしても、何で蟹の名が出てくるんですか?」
「ああ。マニゴルドに話を聞いてたんだ」
蟹が自分の話を…
顔から血の気が引く様に感じ、ハクは肩を揺らす
どんな話をしたか知らないが、あの男のことだ、悪い予感しか浮かばない
「マニゴルドがあそこまで話すなんて珍しいから、どのような子かと思っていたが…」
絶対、今度会った時には今まで馬鹿にした分を纏めて仕返してやる
一人、心の中でそう誓うハクだったが、急に頭に乗った重みに意識を戻す
「こんなに可愛い子じゃないか」
慣れない笑顔からの言葉と大きな掌に撫でられる感触にハクの顔は熱くなった
どちらかと言えば、年下の子供達にしてあげる立場となっていたハクにとって、それは久しぶりのものだった
その上、聞きなれない言葉にハクはうろたえる
まだ幼さの残る少女らしい姿に、シジフォスは今頃聖域に帰っている少年の様子を思い出した
シオンが必死になるのもわからなくない
まだ若い二人の姿にシジフォスは優しく笑みを湛えていたが、ふと瞳が曇る
想うは、家族より引き離してしまった、少女のこと