LOST CANVASの章

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太陽が真上を通り過ぎた頃、ハクがシジフォスと祖父が居るであろう書庫を訪れに行った

だがいつもの場所に二人の姿はなく、気配からして奥に居ることはわかった

ハクは一度思い悩んだが、自然と足が前へと進んでいた

もう見慣れたはずの情景が異様に心臓を高鳴らせる

静かな空間にハクの足音だけが響いていた

そして、長いように感じた距離に終点を教えるように地下へ通じる道が開いていた

いつもなら壁のように閉じられている場所に開いている空間

いつもなら通り過ぎている場所


それが今、目の前にハクを引きこむように開け放たれている


「おじいちゃん…シジフォス…」


屈み込み、地下書庫に通じる空間を見下ろす

入ってはいけないと理解しているのに、返事がないのをいいことに、ハクの体は次第に動いていく

掛けられた梯子を一歩、一歩、慎重に降りていくと、浮足立っていた心を安定させるように足の裏が地面に着く



「これが…書庫…」


蝋燭の明かりに灯された小さな部屋

その壁にずらりと並ぶ書籍と、4つの壁にある扉

こんな部屋が古代より存在するなんて驚愕なことだが、それだけジャミールの技術がすごいということだろう

ハクは、無暗に立ち入ってはいけない場所に自分が居ることにより気持ちが興奮していたが、長い年月を過ごしてきた書に宿る威圧感に囲まれている状況に不思議と頭は冷静だった


「………」


そんな中、ふとハクの視線が一冊に留まる


少しだけ



少し、覗くだけ


心でそう呟きながら、ハクの腕が、伸びた



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