LOST CANVASの章
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暗所に保存されていた一冊は、しっかりと手入れが行き届いているのだろう
それを確認した時、ハクは表紙を表にして題名を読もうと試みるが、すぐに落胆した
ハクが知ることのない文字が綴られたものだったからだ
何処か他所の国の文字だろうか?
それで解決しようと最後に今一度題名を見た時だった
「―――――」
脳内に何かが通り過ぎると、意識に関係なくハクの唇が動いていた
咄嗟に片手で口を覆う
今のは…それに、何で私っ―――
聞いたことのない言葉が自分の唇から落ち、その上頭にはその意味が瞬時に浮かんでいた
理解出来ない体験に恐怖が襲いかかってきたハクは、すぐに手に持っていた書を元の場所に戻すと逃げるように上へと走った
いつもの机の場所に辿り着いた時には、ハクの体は冷や汗が浮かんでいた
「頭が、痛い…」
あの言葉の意味に刺激されたように頭が揺れている
気を抜くと、何かが恐怖と共に襲ってくるようだ
けれど、一緒に込み上げてくるもどかしい感覚は、何だというのだろうか?
「ハク!!どうした、気分が悪いのか?」
「…シジフォス…おじいちゃん…」
ハクの気配に気づいて戻ってきたシジフォスの瞳に映ったのは、机に寄りかかるように蹲る少女の姿だった
様子を確かめるためにその表情を覗きこもうとすると、彼女は何かに脅えているような目をしていた
「ごめんなさい…私……地下書庫に入って」
二人は何となく予想がついていた言葉に耳を傾けた
「入口の書を取ったら…何か、変で」
地下書庫には確かに危険な書物も存在するが、それは厳重に保管されており、ましてや入口付近になど古代の書物はあってもそこまで重要な書などない
なのに孫は、恐ろしいものを見たように様子がおかしい
「…シジフォスさん。ベッドに連れていってやってくれるかね?」
「はい。ハク、立てるか?」
小刻みに震えるか細い身体を支えるようにシジフォスは優しく彼女に声を掛けると、自身が使っている部屋へと連れて行った