LOST CANVASの章
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突然の祖父の要求だったが、ハクは少し考えた後、椅子に座して先程と同じように与えられた書物の修復を始めた
傍らでその様子を見張っていた祖父は、書物の修復に取りかかるハクの一つ一つの動作を目に入れていた
自分がしていたことをよく見ていたのだろう
ハクの動きは、紛れもなく自分が見せていたモノに近かった
そして、修復出来たものから出来栄えを確認していく祖父だったが、先程の書物と同様に驚きを生じた
まさか、あのハクが此処まで出来るようになるとは正直思えなかった
幼いころは、あんなにも小宇宙の扱いが苦手だったというのに、修復された書物は申し分なく、まるで真新しく生まれ変わったような姿だった
全てが修復し終わる頃には、日が暮れ出していた
「お、終わった…」
小宇宙を精密に長いこと操ることが終わり、ハクは倒れるように机に顔を伏せた
一冊なら大したことないが、こうも連続で修復すると神経を使うのだと知った
「これ!起きんか、ハク」
びくりと肩が跳びはね、ハクは瞬時に顔をあげ、祖父を見上げた
既に自分がしでかした事を忘れていたハクは、今一度腹を括ろうとした
「何をそんなに身構えておるんじゃ?」
「えっ?だって怒ってるんじゃ…勝手に書物の修復して」
「驚いておるが、怒ってはおらん。それに書物の修復に対して怒るのなら、最初からお前に手伝わしたりせんわ」
「そうなの?私てっきり、書物の修復技術って極秘なのかと…」
なんだ、心配して損をした
内心、そう呟いてため息を吐いたが、ふと疑問が浮かぶ
「って、何でこんなことさせたの?」
「何。単にお前がどれ程出来るかと思っただけよ。じゃが、見よう見まねで此処まで出来るとは思わんかったがの」
さすが我が孫、と豪快に笑う祖父は、やはり自分の育ての親だとハクは思う
「良かったね、ハクお姉ちゃん」
姉と慕うハクが怒られないで済んだことに笑うアトラ
そんな無垢な姿にハクは頬を緩ませ、幼いアトラを抱き上げた
「これこれ。まだ話は終わっておらんぞ」
「でも、怒ってないんでしょ?」
「怒ってはおらんが、何のために修復させたと思っておるんじゃ」
まぁ、確かにそれもそうだ
修復出来ることを知ったとは言え、急にあの量を修復させるなんて急過ぎる
そして、アトラと嬉々として戯れるハクに祖父の声が届く
「ハク、聖域に行ってみんか?」
感情が、一瞬で複雑に揺らめいた