LOST CANVASの章

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「聖域には、ジャミール以上に重要な書物が多く眠っておる。シジフォス様が重要なことを調べているのはわかっているじゃろ?その手伝いも兼ねて、ハクに聖域に行ってほしいのじゃ」

「それなら、おじいちゃんが行った方がいいんじゃ?」


聖域の書物を自分みたいな未熟者が修復するなんて考えられない

それにシジフォスの手伝いなら、他の人でも十分事足りるだろ


「わしは、此処での修復が忙しいんじゃ。それに、お前のような悪餓鬼は、少し世界を見て根性を直した方が良いしの」


そんな理由で私に聖域の仕事を任していいのか?


「お姉ちゃん。行きたくないの?」


珍しく自分が呆れていると、アトラが問うてきた


行きたくないわけではない、むしろ行きたいくらいだ


けれど複雑な表情を浮かべるだけで答えないハクにアトラは一生懸命言葉を続ける


「あのね、お姉ちゃん最近元気なかったでしょ?でも、シオンに会ったら元気になると思うの。シオンって人、今聖域にいるんでしょ?」


ずっと心配してくれていたのだろうか、アトラの澄んだ瞳が異様に胸に突き刺さる


今も尚、鍛錬も兼ねて聖域で聖衣の修復の日々を過ごしている友


此処で待つことを決めていたけれど、会いに行きたい気持ちはある

けれど、そんな自分の欲のために行ったところで友の邪魔になるだけだとハクは思っていた

それに、彼に会った所で、脳内に巣食うものが果たして薄れるだろうか?


「…でも」

「なんじゃ?アトラに其処まで言われておいて、行かんわけじゃあるまい?」

「だって、私が行っても何も出来ないのに」

「いつまでもそんなことを言いおって。理由ならやったじゃろ?お前の実力なら申し分ない。わしが認めたんじゃ安心せい」

「そうだよ。僕、知ってるもん。お姉ちゃんがすごいって。だから行ってきて。僕、お姉ちゃんが元気になれると嬉しいから」


ひたむきな言葉が心を締め付ける




「アトラ、ありがとね…」




若紫の喜色満面が世界を明るくするようだった


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