LOST CANVASの章
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「此処が、聖域…」
近景をじっくりと瞳に刻むように見渡した
ユズリハのテレポートにより飛ばされた先にあったのは、古代の破損した異物の姿だった
けれど、シジフォスの案内の元進んだ先に見えたのは、先程までと違う白い趣ある建物であった
ジャミールと全く違う光景に、ハクはごくりと唾を飲む
「驚いたか?」
「うん、ちょっとね。私、ヒマラヤ山脈の外って言ったら、近くの町くらいにしか行ったことなかったし。シオンに話には聞いていたけど、やっぱ実際に来た方がすごい」
初めて訪れた聖域の地に少し落ち着かないハクは、しっかりとシジフォスの後に着いて行っていたが、次々と目に飛び込むモノを物珍しそうに見ながら歩いていた
その様子に来たばかりの頃の甥の姿を重ねて、シジフォスは密かに笑った
「シジフォス様!!」
「ホントだ、シジフォス様だ!!」
視線を様々な所に向けていると、シジフォスを呼ぶ声が耳に入った
それにより歩みを止めたハクだったが、視線を目の前に戻すと、あと一歩の所にシジフォスが背負う黄金聖衣の箱があることに気づき、危機一髪だったことに胸を撫で下ろした
そして、シジフォスの前を覗こうと横から顔を出すと、少し離れた先に居る人影がシジフォスにそれぞれ声を掛けていた
恐らく聖闘士候補生か何かだろう
シジフォスは、その1人1人に向けて返答をしており、これが慕われる要素だな、と納得した
「すまないな、ハク。では、先を急ごうか」
振り返ったシジフォスに一つ頷き返したハクは、またしてもシジフォスの歩みに続こうとするが一瞬歩むのを留まる
「あの子、聖闘士候補生かな?」
「そうだとしたら、すごい才能があるんだろうよ。何せシジフォス様が見つけたんだ」
先程の子たちの声に苦笑いが浮かぶ
聖闘士候補生でもないし、期待されるような才能なんてないのになぁ
「どうした、ハク?置いていくぞ」
「ごめん。すぐ行く!」
先に進んでいたシジフォスに追いつくために、ハクは荷物を背負いなおして振り切る様に走るのだった