LOST CANVASの章

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岩山に沿うように立つ建物を目指すために奥に進んでいくと、辿り着いた頃よりもはっきりと小宇宙が幾つも燃えているのが感じられた

証拠として、あらゆる方角から岩が砕けるような音が聞こえたり、若者たちの血気盛んな声が岩に反射して届いてきた

育った地で小宇宙など慣れていたが、比べ物にならない数に胸が躍る様にざわめいていた


「黄金十二宮…これを今から登るんだね」

「登れるか不安そうだな」

「だ、大丈夫だよ!こう見えて、ヒマラヤ山脈を駆けて遊んでたんだし!」


そうだ、ヒマラヤ山脈に比べれば大したことない


瞬時に駆けあがるとなれば無理かもしれないが、これでも一般人よりは体力があるハクは自分に言い聞かせるように意気込んだ

いざ登ろうとした時、隣に立つシジフォスが何かを見つけたように上を見上げたことに気づき、ハクも同じように面をあげる


「シジフォス、帰ってたんだな!!」


戯れる小宇宙が目前に舞い降りてきた

砂煙をあげたソレは、歳の頃は10歳くらいであり、黄金聖闘士のシジフォスに顔を向けている

すると少年は、ハクの存在に気づくと、猫のような眼をハクへと移し、覗き込むように近くに寄ってきた


「…女の人?」

「…一応は、女です…えっと、シジフォスの知り合い?」


まるで匂いを嗅ぐように鼻をひくつかせた後、聞かれた事に複雑な心境になった

どう対処するべきかと悩んで、助けを求めるように射手座の彼を仰げば、気を使って少年を離してくれた


「この子は、レグルスだ。半年くらい前に俺が此処に連れてきたんだ」

「そっか…何か、似てるような気がするけど…」


弟子みたいなものにしても、まだ幼い少年はシジフォスに似ていた

ハクが不思議そうに少し離れた少年―――レグルスの顔を見ていると、シジフォスが少し困ったように口を開いた


「レグルスは、その…甥っ子だからな」


甥っ子

瞳に哀しげな色を浮かべたシジフォスの様子に5年前のことを想い出す

黄金聖闘士の中で最強を誇り、射手座のシジフォスの兄に当たる人の死を


そうか、この子…前獅子座のイリアスが残した


「それで、あんたの名前は何て言うの?」

「私はハク。今日から少しの間、シジフォスの手伝いも兼ねて聖域に来たの」

「…ハク、か。よろしくな!」


子供特有の笑顔を浮かべて差し出してきた手に少しばかり驚いた後、ハクはその手を握り、笑顔を返した

それに今度はレグルスが驚いた様に瞳を瞬かせたが、その意味はハクにはわからなかった


「そ、そうだ!シジフォス!稽古してくれよ!」


慌てて手を離し、二人の様子を見つめていたシジフォスに少年は体を向けた


「そうだな。明日には付き合ってやろう。だが、今日はすまないが無理だ。これから教皇様に報告に行くのも兼ねて、ハクを案内してやらないといけないからな」

「ふーん…そっか」


頭を大きな手で撫でられながら納得する少年だったが、少しハクに視線を送るとすぐにまたシジフォスを見ていた

それに悪いことをしたなと感じ、ハクは苦笑いを浮かべるのだった


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