LOST CANVASの章
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「それで、私に聞きたいこととは、何だね?」
彼の姿に意識を囚われていたが、彼の声に本来の目的を思いだした
「あの、アテナ像の見える慰霊地って、どう行ったらいいんですか?」
「……あのような場所に何もないはずだが…」
まさか道を尋ねられると思っていなかったのか、黄金聖闘士は少し眉を顰める
その姿にハクも困り果てた
「其処に、友がいるはずなんです」
「友?…もしや、ハクレイ殿の弟子であるジャミールの者か?」
ハクの顔が明るくなった
彼が言うのは、正しくシオンのことだろう
「確か名をシオンと言ったか?」
「そうです!聖衣の修復に来ているシオン!」
「ふむ。あの者は、中々見込みがある…その友にわざわざ会いに来たのか?」
「私も当分こちらに居ることになったんで、会いに行こうと思って…もちろん、ずっと会いたかったんですけど」
「……なるほど。それでアテナ像の見える慰霊地だったな」
「はい!」
「この十二宮を降りたら南西に進むといい。太陽の落ちる方角にアテナ像が見える様になったら、次はアテナ像に向かって歩きたまえ」
其処に目的の場所があるだろう
男が指さす方角に友がいることを想うと、ハクの表情は一層明るくなった
「わざわざ道を教えてくれて、ありがとうございます!乙女座さん!それじゃ、私は失礼しますね!」
「気を付けて行きたまえ」
別れを告げる中、乙女座が見せた表情にハクは欣快な気持ちとなった
シジフォスの様子から、気難しい人と想像していたがそうでもなかった
「はい!」
彼の優しい気遣いを胸にハクは外へと向かった
だが、処女宮を出た最中、ある事に気づく
「名前、教えてもらえば良かったな」
射手座や牡牛座のように、長いこと黄金聖闘士である人ならば噂で名前とかも流れてきていたが、乙女座のことは余り知らなかった
確か、長であるハクレイがその素質を見抜いて連れてきた人だとは聞いたことがある
だが、それぐらいしか知らない
「今度、聞いてみよう」
どんな名前だろうか?
美しい人の先程の表情を思い浮かべると、ハクの胸は熱くなった
そういえば、前にもこんなことがあったような?
過去にも同じようなことがあった気がしたが、すぐにそれを思い出せれず、既視感を味わいながら下へと向かった