LOST CANVASの章
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シジフォス並びにエルシドとお茶を嗜んだ後、窓から差し込む心地の良い陽気を浴びる中で眠りに落ちてしまったハクは、知の聖闘士にその姿を見られ、挙句には書物まで借りる約束までしてしまった
「絶対シオンにそんな話したら、間抜けって言われるだろうなぁ」
友の呆れる顔が目に浮かびながら、ため息を吐きつつ十二宮から友の場所へと向かう
別に借りることが嫌ではないが、黄金聖闘士に迷惑を掛けてしまうことになるようで困っていた
それをシジフォスに相談しても
“いいじゃないか。デジェルに色々教えてもらうといい”
案の定、彼らしく笑顔で後押しされた
「蟹…あれに相談するのは癪だし……」
まぁ、あんまり気にしても仕方ないし、流れに身を任すべきか
「危ないっ!!」
「え?―――」
独り言に一区切りつけた時、何処からか声が聞こえ、何事かと首を動かすと同時に、ハクに何かが飛んできた
一瞬、それが人だと確認したと同時に、ハクの身体に衝撃が奔る
勢いを付けて自身に降ってきたそれを抱きとめた時、鍛えていてよかったと思った
「大丈夫?…て、君は確か…」
「大丈夫か、お主!?それにレグルスも」
駆け寄って来たのは、見慣れたような金色だった
今日は、黄金によく出会うな
12宮に住まうのだから当然なことだが、まだ来て日が浅いハクはそう思いつつ、受け止めた少年―――レグルスを見やった
「仮面をしていないとなると女官か?そうだ!怪我はないか!?」
「ええ。大丈夫です。私、多少は小宇宙を扱えますので…君の方こそ平気?レグルス君」
ただの女官ならば、大けがをしていても可笑しくない衝撃だったため、相手は慌てていた
ハクは一つ笑顔を向けてから、まだ腕の中にいる少年を立ちあがらせて、自身も起き上がった
「平気だよ。それよりシジフォスが連れて来たハクだったよね」
「ん?もしや、ジャミールから連れて来た者か?」
「はい。ジャミールのハクです。牡牛座のアルデバラン様ですよね」
「シジフォス、それにレグルスから話を聞いているぞ!」
シジフォスはわかるが、何故レグルスの名前が出てくるのか少しわからない中、相手は続ける
「しかし此処で何をしているのだ?」
「ちょっと友達の所に向かう所で…レグルス君、どうしたの?そういえば、出会った時も私を嗅いでいたようだけど…」
もしかして、鼻に付く様な臭いでもするのだろうか
ハクは、そう考えるだけで顔が引きつった
一方で相手のレグルス少年は言葉を濁していた
「ああ、それはだな。何でも、母君の「言わなくていい!!アルデバラン!!」」
それ以上言わさないと、レグルスは吠えた
その反応にアルデバランは豪快に笑い、意味がわからないハクは首を傾げる
けれど、その姿が少しだけ昔のシオンに重なり、ハクは微笑む
「可愛いね、レグルス君」
「―――っ」
笑顔を向けられ、アルデバランとは違い、優しく頭を撫でる掌
その行為にレグルスは懐かしい気持ちを覚えるが、面映ゆい感じもした
「そうだ、これあげるね」
頭の感触が離れるのに気づいた後に、レグルスに差し出されたのは一つのお菓子だった
「良かったらアルデバラン様もどうぞ」
「では、ありがたく貰っておこう」
「それじゃ、私は失礼しますね。レグルス君、修業頑張ってね」
同じように黄金聖闘士であるアルデバランにもそれを手渡すと、ハクは本来の目的を思いだしてその場を去っていった