LOST CANVASの章

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「やはり此処に居たかシオン!」


今来なくてもいいものを


シオンは、眉を寄せて自分を呼んだ相手を見上げた


「ん?なんじゃ、そ奴は?」

「なんでもない!こいつは、その…」


近づいてくる相手に気づき、シオンは慌ててハクの顔に布を押しつける

けれど、相手は珍しいものでも見つけたように、ハクを覗こうとしてくる


「何故、隠す?」

「お前が気にすることではない!」

「そう言われると気になるのぉ」


珍しく断固として、その者を見せないとばかりのシオンの様子に興味を持ったのか、相手は隙を見て、その布を奪おうとした

けれど、シオンも負けじとその布を剥がさせはしなかった

そんな子供らしいやり取りは、平和だと第三者は思うかもしれない


「…っん〜〜〜〜…!!死ぬっ!!はぁ…はぁ…溺れるかと思った…って、夢か…」


だが、昼寝に浸っていたハクにとってはいい迷惑であった


「…何故、布が……てか、何してるのシオン?それに、この人誰?」


もちろん魘されていた原因が、まさか幼馴染みによるものだとは夢にも思わないハクは、自身の頭に掛かっている布を手に取った

そして、自分の左右で何故か呆気に囚われている両者を交互に見つめた


「女?じゃが、仮面をしておらぬようじゃが…」


まさかシオンと一緒に居る者が女性だと思いもしなかった少年は、予想外のことに目の前のハクをじっと見つめた

見ず知らずの少年にじっと眺められることにハクは困惑していると、それを気に食わないとばかりにシオンが口を出す


「こいつは、聖闘士じゃないからだ。前に話していただろ、私の幼馴染みが来たと」

「ぉお!ということは、お主がハクか!わしは童虎じゃ。シオンとは数カ月前に知り合っての、ハクの話は聞いておるぞ」

「てことはシオンの友達だね。私はハク。宜しくね…童虎、君?」

「童虎でよいぞ。その代わり、わしもハクと呼んでいいかの?どうも、敬称を付けるのは苦手での」

「もちろん!それに、私も苦手だし」

「それで童虎。何の用だ?」


童虎に笑顔を向けるハクの姿にシオンは焦りを覚えた

その原因が童虎でないこともわかっており、その発端も知っている


「そうじゃ、そうじゃ。今から手合わせせぬかと思っての。じゃが」

「私なら気にしなくていいよ。せっかくだから、聖域を廻ってきたりしようと思うし」

「1人で行くと、迷うだろ」

「なら、帰って―――」

「それは駄目だ」

「?なんでよ?」


首を傾げ、理由を求めるハクにシオンは言えなかった

言った所で彼女は笑うだろう

いや、笑ってくれればいい


笑って“馬鹿だね、シオン”と言えばいい


けれど、そうじゃない反応を示されたらと思うとシオンは血の気が引いた



「せっかくの休みなのだ。私が案内をする」



瞳を輝かせる彼女に、不安を隠すような笑みを向けた


卑劣な自分を嘲笑うように



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