LOST CANVASの章

□2-9
3ページ/3ページ




ハクは、拾い子だった

ただそれだけで疎外されることがあった

それでもハクは笑顔で居て、そんな彼女を守ろうと決めていた


彼女が幸せになることを願っていた


彼女が皆に認められるなら、嬉しかった


だから、仕事を任されて聖域に来られた事に喜ぶ彼女を自分も祝福した


彼女の周りに人が集まる姿を暖かく見守っていた


喜ばしい変化だった


けれど、それだけではなかった



“この景色、あの人にも見せてあげたい”



胸から溢れるように込められた言葉

何気ない一言だったけれど、幼馴染みの浮かべた解顔に身の毛がよだつようだった


今まで見たことのない、その表情は、彼女が幸せだとわかるのにシオンは嫌悪感を覚えていた


そしてわかった


ハクの幸せを願っていた

けど、それを与えるのは自分だと望んでいた


結局は、自分の幸せを願っていた


そんな資格、自分にはないとしても―――




そうわかっていても、ハクの傍を願わずにはいられなかった



「ハク」


「どうしたの、シオン?」


「なんでもない」



ハク、私は………



変化を望んでいた、けれど、変化が来ないことを祈っていた



前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ