LOST CANVASの章
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ハクは、拾い子だった
ただそれだけで疎外されることがあった
それでもハクは笑顔で居て、そんな彼女を守ろうと決めていた
彼女が幸せになることを願っていた
彼女が皆に認められるなら、嬉しかった
だから、仕事を任されて聖域に来られた事に喜ぶ彼女を自分も祝福した
彼女の周りに人が集まる姿を暖かく見守っていた
喜ばしい変化だった
けれど、それだけではなかった
“この景色、あの人にも見せてあげたい”
胸から溢れるように込められた言葉
何気ない一言だったけれど、幼馴染みの浮かべた解顔に身の毛がよだつようだった
今まで見たことのない、その表情は、彼女が幸せだとわかるのにシオンは嫌悪感を覚えていた
そしてわかった
ハクの幸せを願っていた
けど、それを与えるのは自分だと望んでいた
結局は、自分の幸せを願っていた
そんな資格、自分にはないとしても―――
そうわかっていても、ハクの傍を願わずにはいられなかった
「ハク」
「どうしたの、シオン?」
「なんでもない」
ハク、私は………
変化を望んでいた、けれど、変化が来ないことを祈っていた