LOST CANVASの章
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似ている
シオンの元へ行く途中に出会った青年が、再びハクの視界にあった
聖闘士候補生の様子を見つめていたのだろう
青年は忍び寄る気配に気付けなかったことに驚いているのか、ハクを驚いた瞳で捉えていた
「あの、あの時はありがとね。貴方のお陰で、友達に会えたよ」
「……用はそれだけか。それなら、さっさと去るんだな」
冷たい物言いに予想はしていたものの、ハクは寂しい気持ちになった
けれど、ここで引き下がるわけにはいかないと顔を背けた彼に一歩近づく
「まだ用があるのか?」
「うん。だって、名前を聞いてないんだもん」
「…前も言ったはずだ。俺の名前を聞いて、お前に何の得になる?」
「得とか関係あるの?私は、貴方の名前を知りたいだけ」
「……」
引き下がらないハクに青年は不審な目を向けるのみだった
「私、貴方と友達になりたい。名前を知らないと友達になれないでしょ?」
ハクの言葉に青年は、瞳を見開くと次には怪しい者を見る様な視線を送った
「ふん…愚かな娘だ。俺と友達だと?大方、アスプロスに近付くためか」
「やっぱり、そっか。貴方、アスプロス様の兄弟なの?」
青年の素顔はマスクによって全ては窺えないが、ハクはアスプロスと出会う度に思っていた
アスプロスと青年は、よく似ていると
だから、兄弟か何かだと予想はしていた
「白を切る気か。知っていて近づいたのだろ?」
けれど、そんなことなど露程も知らない青年は、敵を見るような視線をハクに送っていた
誰にでも慕われる青年の兄―――アスプロスは人知勇を磨き抜いた人物で黄金聖闘士の1人だった
そんな彼にどうにかして近づこうとする人間も少なくなかった
「予想はしていたよ。でも、アスプロス様に近付くためじゃないよ?」
「…ならば、どうして俺に構う?」
もちろんハクがそのような人間には青年には見えなかったが、それでも疑う余地を捨てきることなど出来はしなかった
それに、そうでないのなら自分に関わり合いを持つ要素などありはしない
「だって、貴方…寂しい瞳をしてるから」
少なくとも、今まではそうだった