LOST CANVASの章
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もう慣れていた
影として生きることを受け入れていた
兄が上を目指せれるなら、自分は存在を否定されることとなっても良かった
「…お前に何がわかる?俺は災いの星の下に生まれたのだ」
何も知らないような小娘に自分は何を言っているのだろうか
まるで他人のように勝手に口が動いているようだった
「お前のように平穏に暮らしてきた小娘にわかるはずがないっ」
興奮して歯止めがきかなくなったように声を荒げていた
気づいた時には遅く、ジャミールから来たという少女は泣いているだろうかと青年は視線を向けずに居た
「わかんないよ。貴方がどんな風に過ごしてきたかなんて」
聖闘士候補生が闘りあう音など関係なく、少女の声は青年によく届いた
「だって知るわけないよ。私、貴方のこと何も知らないもん。でも、寂しく見えたのは本当だよ?」
「……」
「…貴方の目、昔の私みたいだったから」
何を言っているのかと青年が視線をやると、少女は笑みを濁すことなく言った
「私、拾い子でね、それで里に馴染めなかった。だから友達も出来なかったし、それでも良いとか思ってた。そんな頃の私に、貴方が似てるの。もちろん、一緒にしたら失礼かもしれないけど」
「…何故、そんなことを笑顔で言う?」
「だって、悲しい顔したら皆心配するもの。それに今は、シオンや皆が居るから平気なんだよ」
青年は辛さを見せることはなかった
見せてしまえば、兄が心配するのがわかったからだ
少女もそうなのだろうか
「だからと言って、俺と友達など理解出来ん」
「私と友達じゃ嫌?」
「…そうじゃない。俺は友など居なくても平気だ」
「私も最初はそれで平気だったよ。けど友達が出来るとね、世界が広がるんだよ」
ハクはいい言葉はないかと少し空を仰ぎ、何かを思い出し口を開く
「ああ、そうだ。この間、デジェル先生に教えてもらったんだけどね。友達って言うのは、辛いことは半分、嬉しいことは倍になる存在なんだって」
笑顔でそう語る少女に、ただ青年は瞳を丸くした