LOST CANVASの章

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自分を見ているようだった


だから拘ったのかもしれない、彼と友達になることを


自分もシオンがしてくれたように、誰かに手を差し伸ばしたかっただけかもしれない


そんな馬鹿げた思案だったとしても



彼と友達になりたいのは事実だった


「だから、友達になろう!」

「しつこいな、お前も」

「お前じゃなくてハクって名前があるんだよ」


呆れた溜息が聞こえてもハクは自分の名前を青年に告げるのだった

その様子にいい加減諦めがついたのか、青年は仮面越しに告げた


「…デフテロスだ」

「デフテロス?貴方の名前、デフテロスだね!」

「ああ」

「それじゃ、これから宜しくねデフテロス」


目の前に差しだしてきた手をデフテロスは不思議そうに見ていた

聖闘士候補生が試合を終えた後に交わす光景

自分には縁がないものと思っていた

それが今、自分に向けられている

デフテロスは戸惑いつつも、差しだされた頼りない少女の手に自身の手を差し伸べた

そしてデフテロスが握るよりも早く、少女が腕を伸ばし、その手を握り締めた


「はい。友情の握手ね!」


破顔する少女の掌から伝う温もりに、青年は仮面ごしに笑みを浮かべた


「今、笑った?」

「笑ってなどいない」

「そう見えたのになぁ」


唇を尖らした少女は、変わり者のように思えた



それでも、デフテロスには眩しい存在なのは確かで



ただ、兄以外から感じる温もりを噛みしめた



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