LOST CANVASの章
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地面にしっかりと足がつかない感覚は、不安に陥っている証拠なのだろうか
逃げるように駆け抜けるハクは、全てを否定して欲しいと彼を探した
だが、落ち着きを取り戻せないハクの感覚では、上手く友の気配を辿ることは出来なくて、彼が最後に向かったはずの場所へ向けて足を走らせる
そして光を求めるように森を抜け出した時、ハクは救いの声を聞いた
「―――ハク!!」
聞きなれた声は、自分を探していたのか切羽詰まったように自分を呼ぶ
それだけでハクは救われて、笑顔を浮かべながら声がした方角を見やる
「シオンっ…!!」
けれど、込み上げてきていた喜びは、地に叩きつけられた
「ハク…」
自身を包み込む主にハクは何も出来なかった
なんで…?
なんで、シオン…
体に当たる感触は、人肌ではなかった
伝うのは、人の温もりではなかった
その体は、黄金の鎧に包まれていた
これも幻なのだろうか?
「シオン…どうしたの、これ?」
声を震えさせないように、やっと出した声
自分を抱きしめるシオンは我に返ったのか、腕の力を抜こうとした
次第に自身を包み込む力が遠のいていくのがわかると、まるでシオンの返答を封じるようにその首に自分の腕を回した
「ハク?」
「…お願い、このままで居て…」
あんなにも願っていたのに
あんなにもシオンが黄金聖闘士となることを夢見たのに
あんなにもシオンの夢を応援したのに
あんなにも幻が現実になることを望んでいたのに
素直に喜べないよ
「シオン…私達、これからも―――」
それ以上何も言えず、そっと自分の体を包み込んでくれる友の存在に、認めたくない幻だけを記憶から追い払おうとした