LOST CANVASの章
□2-13
1ページ/3ページ
親友と共にシオンは教皇の間に敷かれた赤い絨毯の上に居た
周りには、最強を誇る黄金聖闘士と言われる存在達
目の前には、自身の師の弟である教皇の姿と黄金の箱
「―――シオン並びに童虎よ。今こそ、お主たちに黄金聖闘士としての資格を授ける時が来た!」
自身の夢のために、そして幼馴染が誇れるような者になるために目指してきた瞬間が今、訪れていた
このことを知らされていないハクは、突然黄金聖衣を纏った自分が現れたら驚くだろう
そしてきっと、自分のことのように喜んでくれる
ハクの笑顔が脳裏に浮かぶだけでシオンは心が満ちていくのを感じる
「お主たちがアテナの聖闘士としての真の志があるならば、聖衣たちは応えてくれよう」
教皇の合図と共に、黄金聖闘士としての資格を与えられた二人は自身の星座の模様を持つ聖衣箱へと手を伸ばす
箱が開かれると、まるで太陽の日差しのような光が現れ、待ちわびていたとばかりに光が飛び出し、二人を包み込んだ
かつては聖衣を侮辱した自分を受け入れてくれたことにシオンは胸が熱くなる
けれど、流れ込んできた情景にシオンは何が起こったのかわからなかった
自分の意識と関係なく、脳に直接送られてくるモノ
“誰だ、あれは?”
淡い髪を靡かせる人物は、か細い体の女性
そして、面をゆっくりと上げる姿にシオンは心臓を高鳴らせる
穢れを知らないような美しさ
吸い込まれそうな瞳が自分を見ている
“…ハク?いや、似ているが違う”
景色は一転すると、その女性と対峙する姿が現れた
黄金の―――まさしく自分が与えられた牡羊座の聖衣を纏う人の表情は背を向けられていて見えないが、向かいの彼女の瞳は憎しみを宿した視線を相手に送っていた
“なんで、そんな目を―――”
まるで自分に向けているような友に似た女性に胸が痛くなり、次に起こった出来事にシオンは思わず腕を伸ばしたくなった
辺りに鮮血が散り、白い体を己の血で染める姿
ハク自身でないとは言え、似ている女性が地に倒れる姿にシオンは体がぞっとする
“この女性が一体…どうして!?”
手を女性の血で染めた牡羊座は、シオンの問いが聞こえてか、ゆっくりと頭を動かした
“…そん、な……”
そして、シオンが捉えたのは
“何故……私と同じ顔を…”
皮肉にも自分自身と瓜二つの顔だった
「―――どうした、シオンよ?」
届いた教皇の声にシオンは現実へと引き戻される
「…いえ、何も」
平静を張り付けたが、シオンは心に生まれた渦に苦しむ
修復師だからこそ、先程見たものが聖衣に宿る記憶なのは結びついた
けれど何故、自分なのだ?
それに、あの女性は?
それとも、何かを知らせているのか?
―――…私が、ハクを殺すとでも言うのかっ?
そんなことあるわけないのに、シオンはその考えに辿り着くと教皇の前にも関わらず走り出していた