LOST CANVASの章

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最後に見た場所に待っているはずの友の姿はなく、シオンは整わない息を落ち着かせながら、気配を探った

中々捉える事の出来ない友の小宇宙に、シオンは押し寄せてくる不安に体が震えてしまいそうになる

すると、焦る心に届く暖かさに再び地を蹴り、森を駆け抜けた

自分の足音だけが響く空間の中に研ぎ澄ませた感覚を広がせていると、微かに感じていた小宇宙が間近に迫る



「―――ハク!!」



捜し求めた黒髪が揺れ、その青い瞳が自分に向けられた

いつもと変わらない姿にシオンは足を進め、その細い肩を抱きしめた


「シオンっ…!!」


包み込んだ身体は、思っているよりも小さくて、昔よりも弱い印象に感じる


「ハク…」


指先に触れる彼女の肌に生きていることを安堵する


艶やかな髪から漂う匂いに心が落ち着く


「シオン…どうしたの、これ?」


耳元で囁くような彼女の声に脳が刺激され、シオンは彼女を解放しようとした


そして、抱きしめていた人の顔が自分を仰ぐ姿にシオンは、瞳を揺るがす


刹那、ハクの腕が温もりを求めるようにシオンの首へと伸ばされた


「ハク?」

「…お願い、このままで居て…」


シオンは彼女の行動の意味を問えなかった

一瞬見えた彼女の表情は辛そうで、決してシオンが黄金聖闘士になったことに対して祝福しているものではなかったからだ



「シオン…私達、これからも――――」



笑顔を想像していたのに、まるで救いを求める姿にシオンは聖衣が見せたモノを思い起こす



どういうことなのだ、牡羊座よ……




その疑問に自身を纏う聖衣が応えてくれることはなく


今ある事だけが全てなのだと、シオンは頭に巣くう暗闇を打ち払い



全ての禍から守り抜くように、愛しい人をかき抱いた




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