LOST CANVASの章
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ジャミールの館にて長ハクレイは表情が優れないでいた
原因は昨夜見た夢にあり、それは幼いころから見守ってきた一番弟子シオンとその幼馴染ハクに関するものだった
お互いを想い合う二人の姿は健気なもので、特に弟子がハクに抱く感情を察しているハクレイは、出来ることならば二人が聖戦を無事に生き抜き、幸せを育めばと願っていた
なのに、夢見たものは
「ハクレイ様、どうなさいました?」
苦難に表情を歪めるシオンと聖闘士の亡骸に立つハクの対峙する姿
そんな事、現実になりはしないのに、血濡れたハクの背後に視えた影にハクレイは悪寒を感じた
「ユズリハ、トクサよ。わしは少し聖域に顔を出してくる」
夢からの暗示にハクレイは前聖戦を振り返る
二神に弄ばれ多くの同胞を失った屈辱が夢に重なり、歯を噛みしめた
「…シオンとハクにあのようなことをさせはせぬぞ」
友に刃を向ける少女の背後に視えた憎む双子神を打ち消すために、ハクレイは聖域を目指した
彼女と双子神を結ぶ糸は、当事者でしか解くことは出来ず
そして、その彼女さえ解くことを選択しないとも知らずに―――