王女と騎士様
□第1章 動き始めた運命
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「僕はみんなと修行してくるから、いい子で待っててね」
シオンに頭を撫でられ、エリナは首を横へ振り、シオンの腕を胸元へ抱え込む。
「いやっ。エリナも一緒に修行するのっ」
あの空間に交じってみたい――。
そんな衝動に駆られていた。
シオンは眉を下げ、困惑した表情を見せる。
「危ないから、ここにいようね」
「お願いっ。エリナも仲間に入れてぇ」
泣きそうな声を出し、だだをこね始める。
エリナには少し頑固な一面がある。
一度決めると譲れなくなる性格。
一方のシオンは人の顔色を伺う“超”がつくほどの気遣い屋。
頼まれたことに対して“no”と言えない性格。
兄妹の中で意見が対立すれば、シオンが折れる流れが自然だった。
「……わかった。ちょっとだけだからね。でも、女王陛下には秘密だよ」
シオンは口元で人差し指を立てた。
彼は実の母親のことを“女王陛下”と呼んでいる。
王室に入れないだけではなく、ミリカ女王から存在自体を拒否されていた。
ミルファナ国の王室には深くて醜い闇が潜んでいる―。
「こう?」
エリナはシオンが用意してくれた短剣を見よう見まねに振り回す。
小さいはずの剣はエリナが持つと長剣のように見えた。