王女と騎士様
□第4章 明暗を分ける王子たち
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1 緑豊かなパリーズ国
「ここがパリーズ国かぁ。山の中にあるんだな」
アールは景色を横目に捉え、呟いた。
パリーズ国は資源に恵まれ、木々が生い茂る緑豊かな土地――。
山々に囲まれた城への道は傾斜が急で、登るのに一苦労だった。
この険しい山が城の防衛機能を高める。
足がパンパンに張ったところで、高台に位置する翡翠色をした城の外観が見え始めた。
――パリーズ国の緑色は“平和”と“自然”を象徴している。
生命を尊び、豊作を願い、資源に富んだ豊かな国へ発展していくよう思いが込められている――。
「敷地内にね、大きな美術館があるんだよ」
瞳を輝かせ、エリナは巨大な宮殿美術館へ視線を向けた。
絵画を中心に様々な美術品が展示されている。
アールは興味のなさそうな目でエリナを一瞬見やると、黙って城門へと足を進めた。
その背を慌てて追いかけ、“待ってよぉ”と後ろ裾をきゅっと摘む。
「ちょっとは感性も磨いた方がいいよ」
「俺には必要ないよ」
冷たくあしらわれ、エリナは少し不機嫌になった状態で門番に声を掛けた。
「これはっ……エリナ王女!いったいどうされたんですか?」
門番から驚いた声を出され、エリナは表情を強張らせる。
「事前に伝えていたはずですが……」
「いえ。伺っていません」
やはりこの国交は偽ものだった――。
エリナを国外で殺害するために計画されたもの。
思わずアールと顔を見合わせる。