王女と騎士様

□第4章 明暗を分ける王子たち
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 リュートはエリナの肩をそっとさすり、落ち着いた物腰で優しい声色で言う。


「何があったのか話してみて」 
 
 エリナはミルファナ国で起こったことを伝える。
――ハーツ総長、女王陛下が毒殺されたこと。
 エリナが“獅子の魔宝石”を引き継ぎ、命を狙われていること。
 今回、道中追っ手に襲われたこと――


「ここまで、よくがんばったね。もう大丈夫だよ」

 辛いことが重なり、滅入っていたのもあり、リュートの口から出た温かい言葉が心に深く沁みる。 

 終始黙っていたアールが口を開く。


「お尋ねしたいのですが、ミルファナ国から事前に何か聞いていませんでしたか?」

 リュートは首を横へ振った後、静かな声で答える。


「……何も聞いていないね」

「そうですか……」 

 物言いたげな顔を浮かべ、アールは言葉を飲み込んだ。
――アールはリュートを疑っている。
 本人はポーカーフェイスを装っているつもりのようだが、エリナにはそれが嫌というくらい伝わっていた。
 リュートは気にする様子もなく、エリナへ言葉を掛ける。


「その“獅子の魔宝石”見せて貰ってもいいかな?」

 エリナは左手の手袋をさっと外し、手の甲を外側に向けた。
 金色の魔宝石の上に黒い獅子が浮かび上がる。
 吸い込まれるようにリュートが顔を近づけ、感想を漏らす。


「これが、ミルファナ国の魔宝石……。紋章も入っているから、本物……なんだね。しかも、これで完全な大きさじゃないなんて……ミルファナ国が潜めている力が恐ろしくなるね。それで、エリナ王女はこの魔宝石を扱えるの?」
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