王女と騎士様

□第5章 始動
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1 賑やかな時間

 僅かに露出されている白い肌へ眩しい日の光が差し込む。
 素性を隠すようにローブを全身に纏い、辺りを警戒しながら、無言で歩いていく。

 退屈そうに大あくびをするレインが長い沈黙を破った。


「なぁ。これから、どうすんの?」

 その問いの答えを持ち合わせていなかったせいで、すぐに言葉が出てこない。
 少し考えてから、エリナは唇を静かに動かす。

「……特に決まってないよ」

 パリーズ牢を脱出して三日目。
 まだ次の目的地は決まっていない。


「はぁ?……じゃあ、今どこ向かってんだよ?」

 レインは眉に力を入れた。


「うーん?ひとまず……ミルファナ軍の目が届かないところに行くつもりだよ」

 エリナとアールはミルファナ、パリーズ、キュアノス国から指名手配されている。
 三国の支配下にある国から、少しでも遠くへ離れなければならない。


「そういうレインは、どうする気なんだ?」

 アールの声にエリナたちを見ながら、後ろ歩きをしていたレインの足がピタリと止まる。


「オレ?決まってないけど、何か?」

「だったら、あたしたちのこと言えないじゃない」

 指先が隠れるほどタボタボしたローブを羽織るリースが不機嫌そうに言った。


「てかさ、お前子ども用着た方がいいんじゃないのか?」

 エリナもアールも恐ろしくて触れられなかった領域に、レインが土足で踏み込んだ。

 案の定、怒りを抑えたような声が飛んでくる。


「それは……あたしが小さいって言いたいの?」

 リースは自身の容姿に強いコンプレックスを抱いている。
 18歳だが、12、13歳の少女に見えてしまうことを気にしていた。
 “小さい”“童顔”“幼児体型”などの類は禁句。
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