王女と騎士様
□第7章 始まりの地
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1 銀色の瞳
美しい森と対比するかの如く、集落は目も当てられない有様だった――。
全焼し、真っ黒に焦げた母屋。
点々と続く穴の開いた地面は、砲撃の痕跡を残す。
木々の隙間から、差し込む陽光だけが、小さな明かりを灯していた。
重くなったエリナの足音だけが、静寂な集落に反響する。
――生き残っている人がいれば。
躍起になって辺りを見渡すも、人の気配すらない。
俯いた先に、キラリと光るものが――。
「これ……」
見覚えのある金色の紋章――エリナが屈んで拾おうとすると、背後から腕を掴まれ、強制的に起立させられる。
振り向いた先には、眉間に深いしわを寄せたアールがいた。
「なんで、勝手に走り出すんだよ?危ないだろ」
感情を抑えた低い声色の主から、厳しい目を向けられる。
ここは素直に詫びなければ、ねちねち説教されそうな雰囲気。
エリナは体を縮こまらせ、眉を下げてアールの顔をじっと見る。
「ごめんなさい。……体が勝手に動き出しちゃったの」
「動揺する気持ちはわかるよ。まさか……魔始人(ましと)の集落が壊滅してたなんて、想像してなかったからな」
アールは現実から目を逸らすように、視線を落とした。