王女と騎士様
□第1章 動き始めた運命
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1 叙任式
エリナの体は次々と煌びやかな宝石で彩られていく。
何層にもわたるフリルの入ったシルクのドレスが可憐に花を咲かせる。
頭に乗せられた黄金のティアラは上品な輝きを放っている。
腰まで届く艶やかな金髪はきっちりとまとめ上げられ、普段よりも大人びて見えた。
鏡の前には16歳になったエリナの顔が映っていた――。
愛くるしい大きな藍色の瞳は豪華な宝石にも負けないくらい輝き、頬はほんのりとピンク色に染まっている。
今日は10年想い続けた相手との約束が果たされる日。
ずっとこの日が来ることを待ち望んでいた――。
「エリ様。お誕生日おめでとうございます。とってもお綺麗ですよ」
エリナの専属の使用人――リースが鏡腰に微笑んだ。
エリナはリースに介添えされながら、パーティ会場へと歩き始めた。
王女という身分上、ドレスは着慣れている。
今日はパーティの主役――。
普段よりも大きく花を咲かせたドレスは重たく、足元が全く見えない。
それでも、足取りは自然と軽やかに弾む。
パーティ会場は贅沢なくらい華やかに彩られていた。
美しい旋律を奏でるメロディー。
色鮮やかな花々。
煌びやかに輝く照明に装飾。
華麗な衣装に身を纏う(まとう)人たち。
その空間は16歳の誕生日を迎えるミルファナ国第2王女――エリナのためだけに存在している。
それでも、エリナの瞳には愛しい彼しか映っていなかった。
幼馴染で4年前に大事な“約束”を交わした相手――アール。
長い睫に印象的な大きな瞳。
女性顔負けの綺麗な顔。
細身で長身の引き締まった体。
4年ぶりに見るその姿は思わず見惚れてしまうくらいの魅力的だった。