王女と騎士様
□第3章 仕組れた罠
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「なんだ?珍しい客だな」
奥の部屋から、白衣を着た細身の男が現れた。
色白でやつれた不健康そうな顔。
常に眉間にしわを寄せ、近寄りがたい雰囲気。
彼の存在はこの部屋に怖いくらい馴染んでいる。
男の名はジルキス――。
光の魔宝石を扱うミルファナ国一のヒーラー。
「エリ様の気分転換に来ました」
「そうか」ジルキスは表情の読めない顔で頷いた。
彼はハーツと同じ年で親友。
その影響でエリナはジルキスと接する機会が多かった。
第二の父親のような存在。
「……エリナ王女の話し相手になるか」
ジルキスの呟きにアールが「えっ?」と意外そうな声を漏らす。
エリナとジルキスが親しい関係にあることをアールは知らない。
「ここの番人を頼む」
ジルキスはアールの肩にぽんっと手を置いた。
「番人……ですか?」
「お前の持っている魔宝石はお飾りか?」
アールは腕輪に取り付けている“光の魔宝石”を見やり、気まずそうに返事をする。
「実は……全然使いこなせないんです」
ハーツから手渡され、二週間が経つ。
アールは身近な人を対象に魔法を発動させる訓練をしている。
だが、思うように成果がでず、成功率は30パーセントといったところ。