王女と騎士様
□第4章 明暗を分ける王子たち
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婚約者ということもあり、すんなりと城内へと通された。
緊張する面持ちで、応接室の椅子に腰を掛け、リュートが来るのを待つ。
淡い緑色のトーンで統一された壁と床。
観葉植物が飾られ、心地のよいニオイがほのかに香り、自然の中にいるような錯覚を起こさせる。
張りつめていたものが、ほんの少し緩む。
ゆっくりと扉が開き、リュートが一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わる――。
華やかな容姿に高貴な佇まい。
目を奪われるほどの見事な存在感。
リュートは見た目だけではなく、芯が強く慈悲深い内面からも次代国王として素質を感じ取れる。
「リュート殿下、お久しぶりです。本日は大事なお話をするために参りました」
エリナは姿勢よく立ち上がり、丁寧に言葉を紡ぐ。
「エリナ王女。遠路はるばるよく来てくれたね」
目を細め、リュートは優しい笑顔を向けた。
その顔立ちは眉目秀麗という言葉が当てはまる。
長い睫も艶やかな瞳も宝石を鏤めた(ちりばめた)装飾品のようだ。
線の細いしなやかな身体。
彼は女性のような中性的な美しさを持っている。
肩下まで伸びる長い髪と瞳はパリーズ国のシンボルである碧色。
「あのっ……殿下に助けていただきたくて……」
胸の前で両手を握りしめ、すがるような瞳でエリナはリュートを真っ直ぐに見る。
事前に話す順序は考えていた。
だが、リュートを目の前にした途端、抑えていた不安な感情が溢れた。