王女と騎士様
□第8章 力の覚醒
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「迷惑掛けて……ごめん」
「何言ってるの?迷惑だなんて思ってないよ」
エリナはミズキの手を取り、穏やかな笑みを向ける。
ミズキはその手を複雑そうに見つめ、黙り込む。
「私の方こそ、ごめんね。もっとたくさん魔力を送ってたら、ミズキはここまで苦しまなくて、済んだのに……」
集落でのことを思い返し、自責の念が込み上げ、口ごもってしまう。
ミズキが倒れたのは、ミルファナ軍からエリナたちを救うため。
強力な魔法を放った代償だった――。
「ううん。エリナは十分、魔力を送ってくれたよ」
ミズキは優しい声音で言った後、少し恥ずかしそうに目を伏せ、付け加えた。
「それに……あの魔法、初めて使ったんだ。だから、成功するか、本当は自信なかったんだ」
「そうだったの?」
目を瞬かせ、聞き返すと、ミズキはコクッと深く頷く。
もし発動が失敗していたら、今頃エリナたちはミルファナ軍に捕まっていた。
一か八かの魔法だったと思うと、少しぞっとしてしまう。
「……あれは、何の魔法なの?」
「移動系の魔法だよ。かなり高度な魔法だから、僕一人じゃ絶対に使えないんだ」
「じゃあ、私も少しは役に立ったんだ」
そう思うと、気持ちが軽くなってくる――。