ウソコイ!

□プロローグ
2ページ/2ページ

「……夜のバイト?」
 これは椿。さらっと爆弾投下するの、相変わらず上手だなあ。
「断じて否!!てか、椿の口からそんな言葉聞きたくなかったよ!」
 うん。私も。
 でも、これで裕実はバイト先を暴露しなきゃいけなくなったね。
「……ノッテリア」
「あぁ、駅前に新しくできた所?」
 私はぼんやりとそこを思い浮かべた。私は自転車通学だし、踏み切りも渡らないから、駅とはほぼ無縁。
「うん、そこ」
 まあ……似合うっちゃあ似合うのかな?
「はいはい、私の話はどうだっていいでしょー!!次、絵万!!」
 ビシッと人差し指を私に向けて、裕実は私に全てを投げてきた。投げつけてきた。丸投げだ。
「絵万は彼氏できたの?」
「えっと……」
 どうしよう。話の流れからして、いるって答えた方が盛り上がりは維持できるよね。
 でも、いないんだよ。彼氏も、好きな人も!
「まさか、いない……とか?」
 裕実がストローを指で弄びながら目を丸くする。
「い、いないなんてことは……」
 言っちゃった。
 多分、嘘だとはバレているだろう。でも、流れ的に、話は合わせるしかないよね?
「じゃ、来週、また会おうよ。グループデートぐらい、平気でしょ?」
 裕実がニヤニヤしながら提案する。くそっ、これじゃあ代理でも立てなきゃいけないじゃないか。
「ちょ、ちょっと……将先輩は受験生なんだから、誘えないよ?」
 椿の制止も聞かず、裕実は話を進める。
「来週、今日と同じ時間に、同じ場所に集合!」
 そして、くるっと椿に顔を向けた。
「北原先輩がいなくても、椿は来てね?」
 椿の仕草を真似して、裕実が首を傾げる。……やっぱり、この仕草は椿だから可愛いんだ。
「う、うん」
 こうして、約束を取り付けられた。

<10月13日(土)11時48分>
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ