ウソコイ!

□プロローグ
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 事の始まりは10月13日の土曜日だった。部活も無く、土曜補習も無い。中学の友達とも休みが重なったから、久々に会おう、ということになった日だった。
「あ!裕実(ひろみ)のそのプリにいるのは、彼氏?」
 ちょっと早めのお昼。だんだんお客さんも増えてきたから、早めにしておいて良かった。正解だった。
「えへへ〜。実はね……今、5ヶ月目なんだ!」
 裕実、ノロケモードに入りました。
 裕実は恋多き女で、最大、一度に3人もの人を好きになった過去がある。三股、じゃない。片想いで3人好きになったんだ。
 で、誰が本命なわけ?と聞いたところ、人はいくら好きになっても悪くはないじゃん?好きになるだけなら。と返された。
 彼女は、性別と産まれるべき国を間違えたと、私は勝手に考えている。
「そういえば、椿は?相変わらず、長くやっていたり?」
「うん」
「……てことは、今4年目じゃん!」
 椿は、中学2年から付き合っている年上の彼氏がいる。椿は美人だし、控えめな性格、成績も良い。彼氏である北原将先輩はそんな彼女に似合うぐらい、イケメン。世の中では草食系男子が流行ったのに、先輩は肉食系だった。
 ま、まあ……、椿と先輩のカップルは、私の理想だから、美化しすぎってのはあるだろうけどね。
「裕実のカレは、知らないなあ……」
「そりゃ、絵万(えま)や椿は知らないだろうよ」
 裕実はジュースを飲み干して言った。
「高校での知り合い。まあ、知り合ったの、バイト先なんだけど」
「あれ?裕実、バイトしてたっけ?」
 椿が首を傾げながら尋ねた。どういうわけか、私と裕実は椿のこの仕草に弱い。椿自身は意識していないらしいけど。
「今年からね」
 うらやましいなぁ。私の学校は進学校だから、バイトする暇が無いぐらい授業やら補習やらあるのに。
「じゃあ、今度行く。どこ?」
 聞いてみた。
「言わない」
 おいおい。普通なら話したって差し支えないだろう?
 もしかして……。
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