LD

□人の儚い記憶
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『・・・は、? ネルとルゥ・・・ミラーも負傷!?』



剣・・・えと、クロ・・サーラ? の継承から、
1夜明けた、日曜日の朝。

朝ご飯を終え、部屋へと戻ってきたら
さも当たり前のように、ベッドで胡坐をしている妖精の姿。


部屋の中に人間じゃない者が居るのは、
ここ最近いつものことなので、もう気にしないことにした。

で、挨拶をそこそこに告げられた
今や顔馴染みとなった、天使と悪魔の負傷の知らせ。



『シエリオ! 負傷ってどういうこと!?』

「まぁ、順を追って説明するから とりあえず座りなよ」

『私の部屋なんですけど』



「ここに座れ」とでも言いたげに
シエリオの向かいのベッドに、ポンポンと叩くシエリオ。

・・・・私の部屋なんですけど。
そう言いながら、叩かれた位置に座る。


あ、そういや初めて会った時のルゥは
ベッドの上で正座してたね。

・・・で、負傷ってどういうこと。



「君の友達が、魔物に襲われたの 覚えてる?」

『一昨日・・・ですね、はい』

「その日の昼、君とルゥが別れた後ね。
 ルゥの卒業した学院に、襲撃があったとネルから知らせが届いた」

『しゅう、げき?』



ルゥの学校のことはよく聞いてる・・

卒業校が襲撃されたら、誰でも気にするだろうし
それは天使でも同じことだと思う。



「で、彼女達は学院に向かった。
 ・・・あんまり歯が立たなかったようだね」

『っ、怪我は!? 容態は・・っ、』

「怪我はしてる。 けど、命に関わるほどじゃない
 安静にしてたら治る傷だって」

『・・・っほ・・、』



胸を撫で下ろす。

・・・あれ、? でもクロサーラ継承の日、
ミラーが居たけどあれは・・・



『・・・ミラーは? 確か・・武器届けに行っただけじゃ、』

「襲撃した人物から狙われて、対戦に発端したらしいよ」

『・・なるほ・・・えぇ、マジすか・・・』



何故対戦したし。

・・・魔物もザッと退治してたし、
とりあえず手合わせ、的なノリだったんかなぁ・・・



『ミラーの、怪我の具合は?』

「ミラーの傷は浅いし、ルゥ達よりも回復は早いと思う。」

『あれ、流石。』



ルゥもネルもなんだけど、ミラーってこう、
どことなく戦士、っていう雰囲気あるんだよなぁ

ド素人だから、その辺サッパリだけど



『・・お見舞いとかできないかな』



姿見ないと心配だ。

人間の体の作りは一緒みたいだし、
回復の早さまでは知らないけど、やはり心配だ。



「気になる?」

『無論です。 ・・・連れてってくれるんですか?』

「興味あるなら。」

『行きたいです』



即答。 昨日森に行ってから、
薄々どうでもいい考えができるようになった。

ファンタジー世界に、私は取り込まれたのじゃないか。 と


・・・・まぁ、まぁ確かにちょっと自分でも
イタいかもとは思うけど・・・

そう感じるのは仕方がない。
現に今だって、目の前に妖精が居る。



「くす、じゃぁ行こうか。 どっちから行きたい?」

『えー・・・と、魔界から。 かな?』

「お、いいねぇ。 人間界の時間はどうしておく?」

『止めてくれるとありがたいです』



自分にはできないことを頼むのって、
勇気ある行動なのかもしれない。

苦笑いしながら、シエリオに頼むと
快くOK出してくれた。 流石は妖精。



「じゃ、行こうか」



未だベッドの上で胡坐のまま、すっと差し出された左手
・・・ワープは結構どんな体制でもいいのね

右手を重ねるように乗せた



『っあ、魔界に行く前にさ』

「ん?」

『魔界ってどんなとこ?』



さっきのシエリオの反応を見る限り、
悪い場所ではないらしい。

ただ魔界と言われて思い浮かぶのは、
魔物がそこら辺を彷徨っていたり、光のない薄暗い場所だ。


・・・に比べて、天界は光溢れてそーだけど



「薄暗いかもしれないけど、ちょっとした街中の夜
 って感じかな、1日中ね。」

『活気とか』

「市場とか出ると賑わってるね。
 掘り出し物とか珍しい物が出回るから」



悪魔も意外と「人」のようだ

思ったより明るそうな魔界に、少しほっとした



「ただ魔界だから、少し治安は悪いかも」

『な!? ちょ、どういうふうに?』

「不良とかいうの? あれ」



何が可笑しいのか、笑い出したシエリオ

・・・・悪魔って全員不良じゃ・・・
あ、そうでもないか。

ネルやミラーは不良って感じはしない。



『シエリオ、もう出発していいよ』

「了解、美紀」



小さく笑って二度目の呼び捨てをした
シエリオに、少し違和感を感じた


・・・もしかしたら、どこかで

なーんて、考えすぎなのでしょうか




―――――




『なんで!? もう行っちゃうの!?』

『やだ、行かないで・・・』

『ホントに、ホントに会えるの?』

『信じてたら、会える?』

『・・・お父さんも、すぐ居なくなっちゃうの』



妖精の森に連れられた時の、体の浮遊感を感じながら
思い出せない、幼き時の私がふと浮かんだ


・・・・誰・・だっけ・・・?
どうしても思い出せない。

悩み始めた時には、魔界に着いたらしい報告が聞こえた










人の儚い記憶



(大事な記憶のはずなのに、何故こうも簡単に消えるの)






 

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