創作世界

□高校1年MCミキは寮生活
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広げた両手の上に浮いた十字架。

顔を上げた先に居た白と黒は私を心配そうに見つめる。

信じられなかったし、信じたくもなかったけれど
私は「それ」を受け入れることにしたのだ。

「今は要らない」と言って、運命を投げ捨てて
投げ捨てた先の道が、抗えぬものだったとしたら。

その先に立ちはだかったものが、
十字架で切り抜けられる道だったら。

その時が来た時、きっと後悔すると思ったんだ。

今日は要らなくても明日は必要だった未来が来ることを恐れたの。

この飾りは証と象徴。
この剣は過去の功績。

この魂は亡き英雄の。

性能や存在、私の力や武器だけを客観的に見ると、
私は『強い』部類なのだと思う。

その強さが私にまで受け継がれてるとは限らない、私は私なんだ。
傷つくのも、傷つけられるのも恐れる弱虫だ。

けど、もし 戦わねばならない時が来たとして。
大事な友人が危機に晒され、傷つけられたとしても。

私は見知らぬ誰かに、動揺せず刃を向けることができるのだろうか?



「珍しいネックレスだね」


偶然にも同じ高校に進学した友達からふと声を掛けられ顔を上げる。

トントン、と友人のレーナは自ら首元に指を差して。
私は自分の首元を見るために顎を引いた。

私の胸元には十字架の形をした剣のチャームが付いたネックレスが
首にチェーンを回してぶら下がっている。

ある時から身につけるようになったそれは私が思うより凄い物らしい。


「十字架のネックレス・・いや、剣のチャームかな?
 ミキがそーいうの着けてるのは珍しい気がする」


普段髪型がコロコロと変わる友人の茶混じりの黒い髪は今は下ろされていて、
彼女の少々癖っ毛な髪が無造作にウェーブを巻いていた。

風呂上がりに付いた髪の跡が残ったのだろうか。

何の意味も込められなかった、
ただの興味心で聞かれた単なる質問に少しだけ微笑む。


「これね、実際に剣になるんだよ」
「そんな小さいのに? 嘘でしょ」
「どうだろ」


返事にごまかすように笑った。

夕飯も終わり風呂も終わり1人、寮の個室。
暇だとラフな格好で遊びに来たレーナを歓迎して迎え入れた。

教えたにも関わらずはぐらかした私の言葉にレーナは首を傾げる。


「・・・ワケアリ?」
「うん」


笑いながら素直にそう返すと、
レーナは質問投げたときの表情のまま。

少しだけ部屋の隅に視線を投げて、「ふむ」と一言呟いた。


「まぁ追求はしないけど・・剣持ってるなら特戦科行かないの?」
「いやー、見ただけでも相当キツそーな訓練量の後に
 仕事行くのは流石にバテるでしょ」
「あぁ、まぁ あれはね・・・」


頷きながら遠い目をするレーナ。

授業合間や通りすがりで訓練を覗くだけの普通科がこの反応だ。
覚悟して通い始めても生半可な覚悟では、即効ギブアップが目に見えてる。

無論学生だし、教える側も生徒に無理を強要してるわけじゃない。

それでも特戦科、私達の通うレーシュテアは、
特に真面目で厳しく、そして「結果」の出る学校なのだ。

レーシュテア特戦科を卒業し、騎士団兵士や旅団員、
また傭兵、賞金首などと戦闘関係の職に付いた者は多いと聞く。


「そいやもうすぐ夏休みじゃん?」
「ん? うん」
「ミキは帰省するの?」
「あー、どうしよっかな」


気温が上がり暑くなり始めた7月始め。

テストも明けてクラスメイト達から
夏休みの予定はあーだこーだといった話を耳にする。


「考えてはいたけど・・予定次第かな。 一応仕事入ってるんだよね」
「MCも大変そうだねぇ」
「楽しいけどね。 ・・・ねぇ、レーナ知ってる?」


少しだけ口角上げて、彼女の顔を覗き込むように上半身傾けて。
レーナを見つめる私に、彼女は疑問符を浮かべた。


「夏休み、公開放送するんだけど」
「うん」
「特別ゲスト、リナなんだよ」
「・・・嘘!?」


衝撃発言から数拍置いて、彼女は目を見開いて前のめりに。
見事な食いつきぶりである。 本当はこれ言っちゃダメなんだけど。

久しぶりに聞いただろうその名はきっと懐かしくも感じただろう。


「あのリナ!? デザブロで甘党代表の同級生リナ!?
 歌うま天然でうちらの地元に住んでる、あの、リナ!?」
「うん。 あのリナさん」
「はぁ〜・・・あのリナがトークデビュー・・・」


信じられないといった表情で口元を覆い、考え込むレーナに少しだけ笑った。
そこまでの反応を見せるか。 期待以上の反応で楽しい。

まぁ彼女はブロガーだから、トーク番組とは縁が無さそうに見えたが。
・・・本人はあれで天真爛漫で喋る子だし出演に関しては大丈夫だろう。


「招待してあげよっか」
「えぇー、それは・・と思ったけどリナ出るもんね、
 因みにどこで公開放送すんの?」
「アルヴェイトの王都ラクナーベル」
「遠い! 泊まるとこどうしろと!」

「ホテル、リナと一緒だけど4人部屋に変えてもらおっか?」
「いや、流石にそれは悪いような気がする。
 ・・・え、4人って何。 ユウリも連れてくるの?」
「反応次第かなぁ」


体を傾けて、少し離れたところに置いてたお菓子を取る。

袋を破いて机の上に置くと、レーナは「貰うね」と一言言って、
早々お菓子袋にへと手を伸ばした。


「ユウリ来るなら行きたいなぁ、 トークデビューのリナと
 仕事モードのミキは面白半分で見てみたい気はする」
「私のは敬語付くだけでそう変わんないけど・・
 あ、後とんでもなく独り言率が跳ね上がるの」
「聞き手が居るからいいんじゃない?」





高校1年MCミキは寮生活



(レーナはいつ帰省する予定?)
(終業式終わって数日くらいで帰ろうかなぁとは思ってるよ。
 乗艇予約入れようかなって考えてたとこ)
(久々の長旅になるねぇ)
(まぁ流石に長期休みくらいは顔出さないとねー。
 遠方の学校に通ってるわけだし)

(私はー・・まぁお父さんはともかくねぇ)
(お母様会ってあげなよ。 寂しがってるよ、多分)
(家で1人だからね。 楽してそーな気もするけど)
(ついでにリナとユウリにも顔出してあげたら?
 なんだかんだ3ヶ月連絡無しでしょ?)








ミキ・クロシェット
  ワケアリの剣、クロサーラを継承済み持ち。
  レーシュテア普通科高校1年。 地元は東方なので寮生

レーナ・メスィドール
  ミキと同じく普通科1年。 地元東方のレーナも寮生。
  暇になったら誰かの部屋に突撃訪問してる。

レーシュテア高等学院の寮
  個室だったり4人部屋だったり割と適当。
  ミキは個室。 レーナは何人部屋にしようか悩み中

リナ・ミリシュ
  レーナ曰く「デザブロで甘党代表で歌うま天然の同級生親友」
  隣でミキが大体合ってるよなぁ、なんて思ってる。

ミキ・レーナの地元
  東方大陸の紅葉の街メイチェ。 因みに学院は西方大陸
  かなり真逆。 かなりどころか普通に真逆





 

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