創作世界

□フィアナの故郷案内
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空を飛んでいる最中の飛空挺から甲板に出て、
見上げた雲1つない真っ青な空に、思わず感嘆の声があがった。

見事な快晴に自然と笑みがこぼれる。
久方ぶりに戻ってきた故郷を、飛空挺の甲板から見下ろす。


「ここか?」
「はい」


眩しさと懐かしさに少しだけ目を細めて笑う。
遠めからでも大きな時計塔は存在感が強く。


「この街には初めて来るな」
「そうなんですか? 意外です。 王都から歩いてこれる距離なのに」
「王都での仕事が慌しくて、近隣に寄る暇がなくてな」


そう言って苦く笑う彼の様子を見て、少しだけ笑った。


「クロウさん、普段から忙しそうにしてますもんね」
「メーゼほどではないだろう」


出てきた名に、あの人はなぁと彼女の姿を思い出す。

アルヴェイド王家や騎士団にも顔を出してるなんて聞きますし、
あの人の忙しさは本当に尋常じゃないと思う。

よく体が持つなぁとすら思いますもの、あれは。
体調を崩されないか心配だ。

クロウさんは上着のポケットに手を突っ込んで、
街並みを見ながら、1つ息を吐き出した。


「互いに時間が取れたら手合わせの1つくらい頼むのだがな」
「・・・それは観戦してるこっちが冷や冷やしますね」
「俺の後ろにフィアナが居てもいいんだが」
「やっ、流石にメーゼさんの相手だけはしたくないです!」


思わぬ申し出内容を理解した瞬間、両手首を交差させて拒否のポーズを取る。
クツクツと可笑しそうに笑うクロウさんに口を尖らせた。


「・・でも真面目な話、後衛でもあれは怖いですよ、」
「前衛に俺が居ても?」


小さく笑いながら問われた言葉に一瞬詰まらせて、 控えめに頷いた。

確かにクロウさんも尋常じゃないくらい強いんですけれど、強いんだけれど。


「後衛でも分かるんですよ、あの、ラスボス感漂うオーラ」
「っく、お前にまで浸透してるのか」


私の発言に彼は隣で、口元を押さえて笑っていた。
あぁ、やっぱクロウさんもそう思ってるんだな、なんて。


「実際は後衛やって、その後誰だったかな、旅団の人が
 メーゼさんをラスボスって例えてたから変に納得しちゃって」
「そういやディスも同じことを言うな。 発生源は大方ディスだと思うが」

「そーいうディスさんも相当強いし結構な化物ですよね・・・
 ディスさんに勝っちゃうクロウさんも充分そうなんですけど」
「フ、言うな」


うーん、私が弱いのか、はたまたこの方達がとんでもないのか。
十中八九後者だとは思うけれど。

彼らの後衛がまともに務まる日ははたして来るのだろうか。

そこまで考えて、飛空挺から着陸のアナウンスが入った。
着陸時は席に座ってください、という案内だ。


「戻るか」
「はい」
「お前の故郷だな。 ツァイトだったか」
「合ってますよ」







「あら、フィアナちゃんじゃないか。 お帰りなさい」
「ただいまです。 またお店寄りますね」

「おっ、嬢ちゃんじゃねぇか。 戻ってきたんかい?」
「帰省中です、数日ほどの滞在ですがよろしくお願いします」

「あーっ! フィアナお姉ちゃんだ! お帰り!」
「ただいま。 ちゃんと良い子にしてた?」


子供達との別れに、手を振って見送る。
私の右隣でクロウさんが1つ息を吐き出した


「・・驚いた、次から次へと話しかけられるな」
「ふふ、地元ですからね」


後ろで手を組んで、走って行った子供達の後姿を見ていた。

王都ラクナーベルから歩いて来れる、アルヴェイト国内の街。
大きな時計塔がシンボルのツァイトは私の故郷。

四角の白タイルが敷き詰まった通りと、明るい外観の多い建物。
変わらぬ街並みにほっとする。


「大したもんだな」
「普通だと思いますけれど」


肩を上げて少し笑うと、「やれやれ」と言わんばかりに笑い返された。
なんだろう、何が言いたいのだろう、この反応は。


「支部に寄る前に部屋を取りたいんだが、ホテルの場所は分かるか?」
「こっちです。 案内しますね」

「ありがとう。 ・・それにしても随分と立派な時計塔だな」
「あの時計塔から眺める日没や夜景はもう絶景ですよー。 後で上ります?」






フィアナの故郷案内



(フィアナちゃんが本好きなのは知っとるけども、
 お連れさんも本が好きなのかえ?)
(わりと読んでますね)
(ほう、 ならこの本はどうじゃ?
 うちのお勧めなんじゃが、読んでみる気はないかえ?)
(ふむ・・スクリ著ですか。 ・・・・・)

(・・・どうですか?)
(これは・・・買いだな。 それと彼女の持ってる本も一緒にお願いします)
(えっ、)
(毎度あり!)








フィアナ・エグリシア
  ツァイト出身19歳旅団員。 地元では皆に慕われるお姉さん
  うっかりクロウに一目惚れして、たまに行動を共にしている。

クロウカシス・アーグルム
  旅団十二使の一角を担う。 フィアナに戦闘を教えた人物。
  フィアナから連絡が入ることは基本無いためクロウが話を持ちかけてる。

飛空挺
  旅団提供の移動手段。 山越え海越え大陸移動にはほぼ必須
  旅団員は値引きされる。 カジノやバーや食堂など設備完璧

メーゼ・グアルティエ
  クロウと同じく十二使一角を担う。 何かと忙しい人ではある。
  フィアナにまでラスボスオーラがうんたら言われる。

ディス・ネイバー
  メーゼの腐れ縁。 今のとこただの旅団員だが、クロウとも
  そこそこ張り合う戦闘力を持つ。 尚、対メーゼは慣れの模様。

時計塔の街 ツァイト
  アルヴェイト国内の街。 王都ラクナーベルからの徒歩移動可能
  大きな時計塔がシンボルで、時計塔から眺める景色は絶景だとか

スクリ・グラペウス
  小説家。 クロウが何冊かスクリ著の小説を所持してる。
  クロウの所持小説を彼女も読んだのでフィアナも知る著者





 

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