創作世界

□メルドの夏休み
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メルドの夏休み 11



陽がほとんど沈んだ頃、2人は鐘の街カンパーナへと戻った。

報告に旅団支部に向かうと、
カウンターの前で受付と女性が会話している様子だ。

扉が開く際に小さな鐘の音で、訪問者に気付いた彼女達が気づく。

オレンジ色の髪を揺らして振り向いた若い女の子か。
受付の男性は2人の姿を見て「おや」と呟く。


「ん、」
「お帰りなさい、お疲れ様でした」
「おかえりなさい。 ご無沙汰してます」


20歳ほどだろうか、女の子はメーゼを見てにっこりと笑顔を向けた。

室内に立ち入ったはいいが、現状が飲み込めずに疑問符を浮かべるメルド。
その隣に立つメーゼは少し驚いたような表情だ。


「クロウが先日帝国来てたのは知ってたけど・・
 フィアナも一緒だったのね。 今日はクロウは?」
「あ、クロウさん共和国の方行ってるって」
「うーん、見事にすれ違ってるわね。 まぁいいわ、特に用事も無いし」


あっさりとそう言い切るメーゼに、フィアナと呼ばれた女性は笑う。
夕日のようなオレンジ色に、綺麗な翡翠色の瞳をしている女の子だ。

メーゼは受付へと顔を向ける。
カウンター越しに立つ受付の男性は首を傾げた。


「ラヴァリーで出たわ。 ほぼ確定ね」
「・・・了解です」
「細かいことは後で言うわ。 メルドは報告頼むわね」


彼女はメルドへと目線を移した後、受付を指した。
彼は短い距離を小走りで、そそくさと受付カウンターへと向かった。

カウンターの前を開けたフィアナが、メーゼの近くに立って彼女を見上げる。


「珍しいですね、学生のお連れさんは」
「うーん、若干成り行きでみたいな節もあって」
「あら珍しい」


くすくすと笑みを浮かべるフィアナに、少し肩を上げる。


「そういえば、フィアナはしばらく1人なの?」
「明後日くらいまでは多分1人ですね」
「・・・その間だけでもいいわ、彼に付き合う気無い?」
「・・因みに・・・学年はどこでしょう?」

「あれ1年」
「あ、それなら私とさして変わりませんね」
「・・一応言っておくけど、フィアナの方が強いわよ」
「え?」







サファリ旅団カンパーナ支部、1階。

依頼の報告を終えたメルドは辺りを見渡した。

本棚の並ぶスペースの脇に設置されたテーブル。
その椅子に座っているメーゼとフィアナが視界に映る。

視線を感じたのか、メーゼは立ち尽くすメルドに気づき手招きをした。
疑問符を浮かべながら2人が座るテーブルに近付くメルド。

「座って」との促しに大人しく椅子を引いて腰を下ろす。


「改めて初めまして。 フィアナ・エグリシアと申します」
「あっ、レーシュテア1年、メルド・ラボラトーレです・・!」

「彼女はレーシュテアの卒業生なの。
 今は旅団員の1人として、あちこち活動してくれているわ」
「へぇぇ・・・」
「観光要素が強い気もするんですけどね」


互いの自己紹介の後、メーゼはフィアナに補足を入れる。

自分と同じ高校と卒業した人が珍しかったのか、
メルドは少し驚いたような表情だ。

フィアナは笑いながら、少し頬を掻く。

メーゼはメルドから目線を外し、続いてフィアナの方へと顔を向ける。


「で、こっちが さっきも言ったけど弟子みたいな在校生」
「ふふ、メーゼさんのお弟子さんなんて贅沢ですね」
「ほ、ほんとに・・・なんでこうなってんのか、
 自分でもよく分かってないんですけど・・」


フィアナとメルドは顔を合わせて話す。

どうやらフィアナはメーゼの素性を知っている様子だ。
まぁ本人が隠してない、というのが一番最大の理由だろうが。

会話が一区切り付いたのを見て、メーゼは一息付く。


「ま、互いの紹介はこれくらいにしといて」
「あ、はい?」
「さっきまで彼女と話してて、本人からは許可が出ているんだけど」
「はい」

「2日ほどフィアナと行動してみない?」
「・・・ふぁ」
「間抜けな声が出るわねぇ」


微かに眉尻を下げ、浅く息を吐くメーゼ。

窓から覗き見える街中は随分と暗くなっており、
人工の明かりが街中を照らしている。

メルドは瞬きを繰り返し、おずおずと口を開く。


「・・ち、チーム体験・・?」
「そうね、そう思ってくれていいわ。
 立ち回りや連携での感覚掴みってところかしらね」
「れ、連携。 フィアナさんって、 えっと・・・」


何かを言いかけて止め、フィアナを見つめるメルド。
本人は少し首を傾げたが、言いたいことを察したであろうメーゼが答えた。


「彼女は弓使い。 魔術も使えるわ」
「あっ、弓・・・!」
「あまり戦闘歴が無いため、足を引っ張ってしまいそうですけれど」


少し困ったように笑いながら頬を掻くフィアナを見て彼は慌てて口を開く。


「いっ、いや寧ろ俺の方が足引っ張るというか!
 レーシュテア卒業生は強いって聞くんで・・! 大丈夫です!」


メルドの発言に、2人は少しの間瞬きを繰り返す。
・・・ふと、フィアナが口元に手を当ててくす、と小さく笑った


「ふ、 そういえば言ってなかったわね」
「本当ですね」
「えっ、え 何? 何の話で?」

「フィアナがレーシュテア卒業生なのは本当だけど、
 彼女、『普通科の卒業生』なのよ」
「え?」






パーティ参戦キャラが増えるよ回


メルド・ラボラトーレ
  レーシュテア高等学院特戦科1年生。 書くことが思い浮かばない。
  戦闘技術としては下の上レベル。
  聞けば理屈は分かるけど身体が動かないタイプなのかもなぁとぼんやり

メーゼ・グアルティエ
  レーシュテア高等学院、特戦科卒業生(主席)
  戦闘に関しては当時からズバ抜けていた。 最早教師すら敵ではない程に。
  フィアナとは学年4つ離れているため、生徒同士として会ったことはない。

フィアナ・エグリシア
  最後の最後で投下したが、彼女はレーシュテア高等学院の普通科卒業生。
  戦闘術を教えることに長けるというレーシュテアで、
  戦闘技能について一切教わっていないことになる。
  それでいて彼女は制限無しで旅団員登録されている

クロウカシス・アーグルム
  「クロウ」と呼ばれ、名だけ出てきた。 今は共和国に滞在中らしい?
  メーゼの同僚であり、フィアナの師にも当たる人物である。





 
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