創作世界

□メルドの夏休み
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メルドの夏休み 13



タブレットに表示された依頼をスクロールしながら、
1つずつ真剣に見比べるメルドが、ふと「あ」と声を零した。


「この依頼、」
「良いの見つかりましたか?」


声をあげたメルドに、近くで待っていたフィアナがタブレットを覗く。
メルドはタブレットの画面を彼女の方へと向けた。

昨日頃、掲載された依頼らしい。

海モチーフの小物制作を考えているが、依頼主は非戦闘員の上に
ここからしばらく離れた帝都に住んでいるから、代わりに収集してほしいと。

海水、砂、貝殻、それぞれ指定以上の量を持ってきてほしいとの内容だ。

収集希望の地は鐘の街カンパーナから、ずっと西にあるベラハ岬だ。
徒歩で片道1時間くらいは掛かるだろうが不可能な距離じゃない。

街の外に行く内容なだけに魔物との戦闘があると予想されるが、
依頼の内容自体は収集であるため、難易度設定は意外と低い。

収集した品は旅団支部に預けた後、
配達専用の旅団員の手によって帝都まで送られるらしい。

フィアナは依頼内容を確認した後、
メルドへ「受注しましょうか」と笑いかけた。

こくこくと頷く彼の姿を見、依頼が表示されたタブレットを
カウンター越しに居る受付へと渡すフィアナ。


「これでお願いします。 メルドさんと私の2人で」
「はい」


頷いてタブレットを受け取り、依頼内容を確認する受付。
手元のキーボードをパチパチと叩き、受付の女性は再度「はい」と言った。


「メルドさん、フィアナさんの2人でこの依頼ですね。
 当依頼は複数人で行っても報酬は変動しません。
 そのため報酬は相談して問題のないように分けてください」
「はい」
「はい・・!」

「尚当依頼は追加報酬有りです。 納品が行われた時点で固定報酬は
 お渡ししますが、追加報酬は依頼主の確認が付き次第となります」
「分かりました!」
「了解です」


受付が伝える依頼への注意と補足情報をそれぞれ了承を述べる。

フィアナは肩に掛けていた鞄からメモ帳を取り出すと、
依頼で要求された納品内容を書き綴った。

書き込みが終えた頃を見計らい、受付の女性は2人へ
「他になにかご質問はありますか?」と問いかけた。


「質問・・えー、っと」
「収集のカゴや瓶等の指定はありますか?」
「指定されていませんね。 付属も無いようです」
「ん、了解です」

「あ、そういうこともあるんですね。 必要な道具が、付属されてないって」
「意外とありますよ。 同じ依頼を受注できる街が1箇所とは限らないから。
 受注可能の街を広げるほど依頼の付属品って無いんです」

「あっ、そっか。 依頼を受けられる全部の街に
 依頼の必要品を送るわけには・・いかないですよね」
「受注した人達がそれぞれ用意した方が早いんでしょうね。
 付属品購入を見越してか報酬が多めに用意されてることも多いですよ」
「はー・・すごい、」


依頼による付属品有無の違いの説明を聞き、納得したように頷くメルド。
その様子に彼女は微笑んだ。


「メルドさんは他になにか質問ありますか?」
「・・・うー、ん・・思い当たらないから無い、と思うんですけど・・」

「ふふ、それでは買い出しから行きましょうか」
「はい! あっ、受付さんありがとうございました!」
「はい、いってらっしゃいませ。 お気をつけて」


それぞれ頭を下げ、会釈をして2人はカウンターから少し離れた。
数歩距離を置いたところで、メルドが「フィアナさん」と小さく呼び止めた。

足を止め振り返れば、少し考えたような表情を浮かべているメルド。


「あの、砂と海水は瓶とかプラスチックのボトルとか・・
 そういうので良いと思ったんですけど、貝殻は・・・どうしたら・・」
「うーん、保存状態の指定も無かったので悩みますよね。
 瓶に詰めちゃうと下の方が割れてしまうかもしれませんし」

「・・平たい、箱・・・とかなら・・・割れないかな・・」
「ふふ、あるかな。 それも探してみましょうか」
「あるといいなー・・」
「あるといいですねぇ」


笑いながら改めて歩き始め、旅団支部の出入り口である扉を
メルドが開け・・ようと手を掛けた時、
扉が一人でに開きメルドが思わず「うわっ」と驚いた声を上げる。

ん、と口を閉ざしたままの小さな声。

支部内観の壁と扉を挟んで現れた鮮やかな紫色を揺らす髪。
扉に手を掛けたままの腕は袖が無く、黒のタンクトップが視界に映った。

メルドより20cmほど背の高いらしい彼は、
2人の姿を認識しては更に「あ」と口を開ける。


「珍しい組み合わせだな?」
「ディスさん・・! お、お、驚いた・・!!」
「や、こっちもごめんごめん。 フィアナもなんか久しぶりだな」
「ご無沙汰してます」


メルドにディスと呼ばれた彼は「おう」と短く答える。

そしてディスは支部内に入ると扉を閉めて、
メルドとフィアナを交互に見比べると、小さく首を傾げた。


「・・そこ接点あったっけ?」
「接点できたの昨日なんですよ。 メルドさんのお手伝いに」
「あー、成程な。 メルド旅団員期間か」

「フィアナさんとディスさんこそ・・お知り合いだったんですね?」
「ふふ、メーゼさん経由で」
「まぁ原因はアイツだよな」
「あっ、なるほど・・!」






本編に直接作用するわけじゃないけど、
居ないと可笑しいなってことで急遽呼び出されるディスさん


メルド・ラボラトーレ
  メルドの夏休み主人公。 相変わらず掘り下げが上手く行ってない。
  この間アニティナでメルドが1人で受けた依頼は、
  街の中で終わる内容のものばかりだったため、
  薪割りに必要な斧や他依頼をこなす上で必要な品が既に用意されていた。

フィアナ・エグリシア
  旅団員歴4ヶ月ほど、1人で活動し始めた期間からは2ヶ月ほど。
  討伐依頼よりもこういった収集依頼に向かうことが多い。
  まだ戦闘歴も浅いし、戦うだけなら他に適任が居るから無理はしない。
  ディスと面識ができたのは2、3ヶ月前だった。

ディス・ネイバー
  本編に直接作用(ry)呼び出されたメーゼの腐れ縁。
  メルドがメーゼに弟子入り志願した瞬間や、メーゼからの弟子許可が
  下りた場面に出くわしているからメルドのことは結構知ってる。
  メーゼと同い年の24歳、184cm。 メルドとちょうど20cm違う





 
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