創作世界

□メルドの夏休み
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メルドの夏休み 1



「あ」


レーシュテア高等学院、運動場兼試合場

中学校とは比較にならないほどの広さを誇る運動場には
部活で使用するテニスコートやサッカーゴールなどを除き、
岩場や草が伸びた草原等を再現した地などがいくつか用意されている。

昼ご飯を終え、素振りしようと学院のだだっ広い運動場に
足を踏み入れたメルドは運動場の中央に人だかりができているのを見た。

人だかりの中央で揺れる長く蒼い髪。
それに食らい付いてるのは男子制服を着たブルーのショートヘア

・・・あ、3年のエアレー先輩だ。

エアレーの武器である薙刀は試合時とは違い、
刃物むき出しでメーゼと手合わせしているようだ

メルドもメルドで真剣で彼女と手合わせをしてる、というか
メーゼが鞘付けなくていいと言うので、彼も同じことを言われたのだろう

人だかりのできた場所以外、がらがらな運動場を小走りで人だかりに近づく。

「てりゃぁ!」と威勢の良い声と同時に、薙刀が勢いよく振られ
メーゼに刃先が向けられるが、難なく木刀で受け止める


「うーん、何だろ。 薙刀は専門外だからな
 刃先と相手の距離が近い時、両手広げた方がいいのかも」
「両手広げる・・広げる?」

「左手は刃先に近いとこ持って、右手は反対側の最先端の方握って。
 近距離なら多分そっちの方が力入るんじゃない?」
「あ、でもそれだと打つ感じになるんじゃ」

「そう、刃先が対象と近い状況限定でね。 さっきよりダメージ通ると思う
 刃先が遠い時は今までので良いわ」
「あー・・そーいうことか」
「ん。 で、次のラッシュがラストね。 お迎えも来たみたい」


そう言ったメーゼは、人だかりに紛れたメルドに目線を向けた
気付かれているとは思っていなかったメルドが瞬きを繰り返す。

特戦科1年、メルドがメーゼの一番弟子だという話は
特戦科では既に周知の事実だ。

彼女の視線の先を追って、メルドの姿を視界に捉えたエアレーが
「あ」と口元を小さく開け、メーゼを見るなり頷いた


「メーゼさんは打ち込まないんですかー!?」
「ん」
「ばっ、 誰だ今とんでもねーこと言ったの!」


人だかりの中から聞こえた男子の声に、エアレーが勢いよく振り返る。
エアレーの対面、立ったまま眺めてるメーゼが口元を手で抑え小さく笑った。


「ある程度ならセーブ利くし、難易度選択してもいいよ
 弱い、普通、強い、鬼強 どれがいい?」
「そんなゲーム感覚な・・ 俺に一番近いのってどの強さなんかな」
「弱いか普通かしら」
「なら普通で行っときます」


薙刀を構え直し、口元に手を当てて真っ直ぐメーゼを見つめるエアレー。
木刀を右手で弄ぶメーゼが、風で揺れたエアレーのブルーの髪を見つめていた







「っだー、だーめだ! これで普通だってんだから次元がちげーや」


メーゼとの手合わせ確定から10分経過。

奮闘するものの5分立たないうちに軽く捻られたエアレーは土の上に座り、
両足を曲げて両手を地に着いて空を仰いだ。

エアレーとは少し離れたところに落ちた薙刀をメーゼが拾う。
メーゼが蹴っ飛ばして吹っ飛んだエアレーの武器だった

彼の対面にしゃがみ薙刀を返す。


「戦闘系の職に付きたいの?」
「そうっすね。 誰も彼もが戦闘できるわけじゃないし、
 せっかく身に付いたんなら活かしていきたいなーとは」
「あら、なら数年後が楽しみね」

「はは、お世辞っすか」
「残念ながら世辞は苦手なの」


ふっと小さく笑ったメーゼがしゃがんでいた体勢から立ち上がり
座り込んだままのエアレーに手を伸ばす。

真夏だと言うのに日焼け知らずな白い指と彼女の顔を交互に見、
エアレーはメーゼの伸ばされた手を握った。

引っ張られて立ち上がり、メーゼに礼を一言言い
制服に付いた土を手で払い始める。


「さて、と。 そろそろ私は退散しようかな
 夏休みで練習するのもいいけど、ちゃんと水分と休憩取りなさいよ」


高校生らしい「はーい」と間延びした声を聞きながら、
人だかりに紛れてたメルドの方向へ歩き出した。

すすっとメーゼが通れる道を作る生徒達と、頬を掻くメルド
学校外に続く門を指したメーゼの後ろを着いていく


「忘れ物ない?」
「はい、多分」

「あっ、メーゼさん!」


人だかりから呼び止めるエアレーの声に、
メーゼが足を止めて上半身だけ振り返る。

メルドも同じように足を止めて、少しだけ後ろを振り返った。
エアレーが口元を挟むように、伸ばした手を口元に当てている


「ご教授と手合わせあざっしたー!」
「どういたしましてー」

「それとメルドー!」
「はい!? 俺?」
「行ってらっしゃい!」


人だかりの真ん中で。

腕大きく振りながらメーゼとメルドを見送るエアレーに
メルドが驚いたような表情して、口をもごもごさせた。

その表情を見ていたメーゼが小さく笑う


「良い先輩じゃないの」
「う、 そ、そっすね。 はい、とても」


若干俯いた角度から、顔を上げたメルドの視界に映ったのは
エアレーだけでなく人だかりの他の生徒も手を振っていた。

彼女は手の甲を見せてひらひらと手を振りながら歩き出した。
歩き出したメーゼと手を振る人だかりを交互に見るメルド。


「っ行ってきます!」


少し照れたように笑いながら、メルドは敬礼するように額に手を当てて
既に大分距離が離れたメーゼの後を追った

夏休み突入から1週間経過。







メルド・ラボラトーレ
 今作主要ストーリーの主人公。 今回はお出ましが遅かったので
 登場回数や発言頻度は少なめ。 高校1年、164cm
 メーゼの実践旅に着いてくことを決心してメーゼに連絡入れた。
 通話越しのメーゼさんが笑ってたような気がする。

メーゼ・グアルティエ
 レーシュテア高等学院卒業の旅団十二使。
 身長171cm、と実はメルドより7cmほど高い。
 薙刀は専門外だと言うけど、実際に薙刀持たせたら持たせたらで
 普通に強い。 武器は剣、弓、銃 基本なんでも扱える

レーシュテア高等学院
 LDのルゥ卒業校、タヴ・レーシュ学院がモデル。
 LD主人公のミキさんもこの学校。 そこらの特戦科より設備が充実。
 特戦科卒業生に有名人も多く、教師の質も良いので
 特戦科生徒の実力はなかなかのもの。 寮制度有り。

エアレー
 LD32話下部にて出てきた天界学院の生徒だった人。
 創作世界ではレーシュテア高等学院、特戦科3年。 薙刀使いの天使
 「メルドが来るまで誰か1人相手してあげるけど希望者居る?」と聞かれ
 真っ先に手挙げたら「んじゃそこのブルーの髪の子」と指定された





 
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