創作世界

□メルドの夏休み
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メルドの夏休み 4



「で、ここの機械に旅団員証を当てて・・・」
「えっ、あ こう・・!?」
「そうそう。 するとこっちで、こんな完了画面が出るんだ」
「へぇぇ・・・・」


旅団支部、メルドが旅団員になってから数時間が経過。

受付がカウンターを挟み、ホログラムの画面をメルドに見せる。

説明を聞き相槌を打ち、キラキラとした目で画面を見つめるメルドの後ろで
カランカランと音を鳴らして支部の扉が開いた。

メルドと受付が会話を中断し、そちらに視線を向けると
扉を閉め終わって室内に入ったメーゼの姿があった。

彼女の腰には黒いウエストバッグが付けられている


「あっ、メーゼさん! お帰りなさい」
「お帰りなさいませ。 お疲れ様です」

「ん、ただいま。 依頼報告してるの?」
「初報告なので、せっかくですから完了画面を・・・」
「あら、いいんじゃない?」


1階の中を少し見回したメーゼが、カウンターの前まで歩く。


「依頼受けたの?」
「はい。 薪割りのお手伝いだったんですけど、数が半端無くて・・・
 予定個数こなすのに2時間くらい掛かっちゃって」

「そりゃぁわざわざ依頼するくらいだし、そんなものよ
 ・・にしてもかなり手応えある物選んだのね。 お疲れ様」
「はい!」


メルドの勢い良い返事に、メーゼは少し笑った後
ウエストバッグから取り出した缶ジュースをメルドに手渡した。

驚いた瞬き2つ、礼の言葉と共にメルドは缶ジュースを受け取った


「メルドの完了報告は終わってるの?」
「後はこっちで報告を受領して・・・はい。
 メルド君、こちらが今回の依頼報酬です」
「あっ、はい! ありがとうございます」


左手に缶ジュースを持ったまま、手渡された小袋を受け取るメルド。
小袋からはコインが重なったらしい音がチャリチャリと聞こえる

メーゼは裾の短い上着の中から、
十二使印の付いていない普通の旅団員証を取り出した。


「続いてで悪いけどこっちのもお願いできる?」
「承知いたしました。 討伐依頼、いくつ受けていましたっけ・・」
「・・・13のはずだけど」
「じゅっ・・・?」


平然と機械に旅団員証を当てるメーゼの隣で、
思わずメーゼの述べた数字に驚いたように眉を寄せるメルド

カウンター越しの画面から、「ピピピピ」と
討伐情報の記録の提示音が絶え間なく続いている


「いや・・・えぇ・・・・ だって、数時間ですよ・・?」
「小型の魔物なら2秒で5匹死ぬわよ」
「・・・・いやいやいや・・・俺5匹いっぺんに相手したら、
 全部倒すのに10分くらい掛かるんですけど・・・」

「そもそも貴方、戦闘スタイルが剣だけじゃない」
「・・メーゼさん、剣だけだったら5匹倒す時間は?」
「10秒掛からないくらいかしらね」
「ダメだ、比較対象が強すぎました」


討伐確認を行っている受付の作業の音が建物内に響く。

「今飲んでも大丈夫かな・・」と小声で呟きながら
缶ジュースを見つめるメルドに、メーゼがカウンターの椅子を引いた。

無言だったが「座って飲め」ということらしい。

メーゼに浅くお辞儀して、メルドは引かれた椅子に座った。
プシュッという音と共に蓋が開く。


「・・・はい、確かに。 討伐依頼13件、取り零し無しです」
「ん、よかった」
「入金の方がよろしいですか?」
「うん。 流石に13件分素直に受け取るのはねぇ」

「はは、かしこまりました。 明日までには入れておきます」
「ん。 さて・・結構依頼片付いたわよね?」
「かなり片付きましたね。 それに伴って護衛依頼も
 難易度下げられるので、自然と消えていくかと」

「この期間なら生徒ら2年3年も登録してるでしょ?」
「既に10名ほど来ていますね」
「旅団員1人付けて生徒2名程に任せたら? 勧めてみて」
「了解いたしました」


メーゼの言葉に頷いた受付の男性は、パチパチとタブレットを叩く。

ある程度飲んだのか、ジュース缶を下ろしたメルドが
メーゼに向かって顔を上げていた。


「この後は何するんですか?」
「ん、貴方に付き合うわよ。 何がしたい?」
「え。 えー・・・・えーっと、 何、何と言われても」

「この辺の魔物は粗方相手したわよね。
 明日辺り別の街に行く予定にして、今日は依頼慣れする?」
「!! そうします!」
「はい、決定。 そんな感じで明日辺りには発つわ、後よろしく」
「了解いたしました」


メーゼの言葉に目を伏せて頷いた受付。

メルドは思いついたような表情をした後、
缶ジュースをカウンターに置き、受付へと顔を上げた


「あっ、あの! と、討伐依頼ってまだありますか?」
「討伐依頼? えぇっと、ちょっと待ってね
 メーゼ様が粗方片付けましたからねぇ・・・」

「メーゼさん居るし、あの 依頼慣れもだし、実戦もしたいしで、
 あ、でもメーゼさん依頼帰りで疲れて、る・・?」
「・・気遣ってくれるのはメルドの良いところだけど。
 アンタね、十二使ともあろう人を甘く見過ぎよ」
「流石過ぎました」







メルド・ラボラトーレ
 今作主人公、のはずだけど主人公ってほどかなぁって思い始めた。
 メーゼがどれほど人外じみてるかは行動してりゃある程度分かるし
 寧ろ「彼女は心配するだけ無駄」って域まで到達するのだが、
 いかんせんナリが仮にも若い女性だからか、つい気にかけてしまう

メーゼ・グアルティエ
 長いことファミリーネームが決まらなかった十二使『夜桜』
 でもあまりファミリーネームは名乗らない。
 外見はある程度歳相応だが、表情が大人びているせいか
 実年齢より上に見られがち。 2ヶ月ほど前に誕生日が来て現在24歳

旅団員証
 旅団員登録を終えた時にメルドが受け取った旅団員証。
 メーゼも同じ物を持ち、魔物の討伐記録が保存される。 不正防止





 
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