創作世界

□メルドの夏休み
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メルドの夏休み 6



「はぁ・・ぜ、 は、 だめだー・・・」


両膝に手の平を付き、肩で息を繰り返すメルド。

アニティナ、コロシアムの試合場端。

息もぜーぜーで明らかに疲れた様子の彼に対し、少し離れた場所で木刀片手に
すんとした表情のメーゼは息切れの1つも起こしていない。


「うーん、体力不足って言われればそれもそうなんだけど
 無駄な動作がどうも残るわね。 オマケに変に力みすぎ」

「メ、ゼさん って、はぁ 息切れ、起こすんですか・・・?」
「・・・ いや、そりゃあるわよ。 人だもの」
「最初の、間、なんだったんですか・・・は、」
「ごめん、少し考えてた」


右手で木刀の柄を弄ぶメーゼを、肩で息を繰り返しながら見上げるメルド。
メーゼはコロシアムの中を見渡しているようで、視線は合わない。

手合わせ開始から30分ほど経っただろうか、
試合場の中は先程よりも人が増えたようだ。


「人間って、なんだっけ・・・」
「あら、哲学?」


思わず口から漏れた言葉に、メーゼが少し面白そうに振り返る。
彼女の片手にあった木刀は、試合場の地に剣先を向けられていた。

メルドは一頻り息を繰り返した後、ようやく背筋を伸ばす。
それでも微かに吐かれる息は疲れの証だ。

メルドのそれまでの様子を、メーゼはじっと見つめていた。


「?」
「・・メルドはさ、 私の事、怖いと思ったことある?」
「え。」


突然投げかけられた質問に、メルドが呆けた表情で反射一声。


「えっと それは、教え方がスパルタだとか、雰囲気とかで、ですか?」
「うーん、まぁそれも無いとは言えないんだけど」
「?」

「具体的には戦っている私の姿を見て、かな」
「・・・うーん・・」


メーゼの声に、メルドを悩んだ表情をしたまま彼女を見上げた。

海のような色をした長髪が動いた際は丸で波のようで。
長剣を平然と操る様は凛々しいことこの上なく。


「えぇっと、怖い・・と思ったことは無い、と思うんですけどね・・?
 強すぎて化物だなぁーって思ったことはありますけど」
「素直ね」

「あ、 でもあの、 流石にさっきみたいな手合わせの時?
 メーゼさんと正面向かい合うのは、その ちょっと怖いです」
「へぇ?」


藍色の瞳が細められて、彼女はメルドの発言に耳を傾ける。
メルドの表情は至って真面目で、まだ何か続きを言いたげにしている。


「ほら・・あの・・・ メーゼさん、激強じゃないですか・・?
 そんな人の相手が俺で、 あの、 なんて言うんだ。 集中、 あ、そう
 一点に集中されるあの感じ! あれはちょっと怖いです!」

「・・・ふ、」
「? え?」
「ふふ、 あぁ、ごめん 案外分かるのね、」


メーゼは口元を抑えて、薄く笑みを浮かべている。
その様子に、頭上に疑問符がいくつも飛ぶ。

メーゼは少し目を細めてメルドを見つめた後、
木刀も軽く振り回して浅く息を吐いた。


「今日は昼から移動でしょ? 手合わせはこれくらいにして、
 メルドは一旦荷造りしてきなさい」
「はい! あ、あの」
「?」

「メーゼさんって、この後の用事とかは」
「メルドがやりたいことがあるなら一番優先して付き合うし、
 無いなら無いで書類処理と依頼消化かしら」
「む、」


悩んだような表情を浮かべたメルドに、彼女は少し様子を伺う。


「何度も言うけど、メルドを最優先するから言っていいのよ?」
「や、でも そしたら依頼とか書類?とかは」
「そんなの近くに居る十二使に丸投げするわ」
「!? そっ、それはそれで!!」


彼の動揺ぶりにメーゼが意地悪そうに小さく笑みを見せる。


「うっ、うぅん えっと、じゃぁ俺昼まで街うろつこうかな・・
 カンパーナのことも軽く調べてみたいし・・」
「ん、了解。 昼ご飯はどっかで食べて、一息付いたら支部まで来て」
「はい!」







鐘の街カンパーナ。

メルドの属するレーシュテア高等学院や、彼らが今滞在するアニティナから
ずっと北に進んだグリフェン帝国内の街。

明確な国境は存在するが、目視でそれを判別することは不可能であり、
しいて判別できる要素と言えばアニティナ周辺とは少々生態系が異なることか


「あっ何こいつめんどくさい! おりゃっ そら!」
「速いものの相手は苦手ね、メルド。 ちゃんと動き見なさいな」
「見る、見る!?」


カンパーナヘの道すがら、街道から少し外れた場所で
魔物退治の練習をしているメルドと付添のメーゼ。

彼女は普段使用している長剣を鞘に入れたまま、
その辺の武器屋で適当に買った剣を片手に、メルドのフォローを入れていた。

彼が追うは浮遊する小さな影、両手の平に乗せるには
少し大きいであろう毛玉を追いかけていた。


街道から少し外れた魔物退治という寄り道を何度か繰り返しながら、
昼過ぎにアニティナを出た2人が、目的地に到着したのは夕方4時頃のことだった。

夏ゆえか太陽は未だ沈まず、街は活気づいている。

少し顔を上げれば街中、塀のすぐ手前にいくつかの立派な展望台があり、
最上には鐘が吊るされているように見える。

初めて来る街に、きょろきょろと見渡すメルド。
近くの展望台から、カランカラーンと鐘の音が響いた。


「ほ、ほんとになんでもないのに鐘がなるんだ・・」
「鐘を鳴らすのは自由らしいわね、観光客がよく鳴らしてるんですって。
 子供達が悪さして鐘を連打する日もあるらしいわ」

「・・い、一度ぐらいは俺も鳴らしたいな・・・?」
「ふ、 カンパーナ滞在の間にね。 とりあえず街に来たんだし、
 支部へ到着報告しに行かないかしら?」
「あ、そっすね はい、行きましょう」







メルド・ラボラトーレ
  突然なものが苦手かもしれない。 今までの敵よりも
  一段階早いスピードで動く相手になると捉えきれなくなる。
  慣れればなんとかなる。 そろそろここに書く内容が思い浮かばない。

メーゼ・グアルティエ
  普段使っている長剣を封印している。
  彼女にとってはそこら辺の魔物も雑魚なので武器変えても余裕ですね
  基本的にメルドのフォローを主とし、自ら倒すのは控えている。 尚本能





 
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