創作世界

□普通科生徒の十二使への依頼
1ページ/1ページ






戦神の街、アニティナの旅団支部に立ち寄ると、
レーシュテア高等学院、普通科の制服を着た茶髪の少女が、
椅子にも座らず受付の人と話している後ろ姿が見えた。

いや、話していたというよりは、受付の質問に
制服の少女が言いにくそうにまごついているように見える

私の一歩前を歩いていた十二使は数度瞬きした後、
少女と受付の方へと歩いていった。

あ、首突っ込むんだ。 その後ろを着いて歩く。


「どうしたの?」
「あ、こんにちは。 ええと・・生徒さんの依頼のようなんですけど
 どうも・・・妙な依頼というか、特殊な事情があるみたいで・・」
「特殊な事情?」

「強い人でないとだめだとか、大っぴらな依頼にはできないとか・・
 そればっかりで詳しいことを教えてくれないんです」


受付さんの説明を聞いて、首突っ込んだ十二使は瞬き2つ。
そしてふと私の方を見た。


「・・聞いてあげればいいんじゃないですか。 別に私に聞かなくても」
「・・・じゃぁそうさせてもらおうかな」


そう言い終えるや否や、普通科女子生徒の方へと向き
十二使の彼は胸元に左手を当てた。

少女は不安げな表情で、瞬きを繰り返す。


「初めまして、スイリ・ミゼルといいます。
 戦闘の腕なら自信があるけれど、
 僕でよければ詳しい話を聞かせてくれないかな?」


優しい笑み。 ・・なんともまぁ悪魔らしくない。
これが素だから出会う人々に悪魔らしくないと言われるんでしょうに。

別に悪魔に性格悪い奴しかいないって言ってるわけじゃないけど、
ここまで白い悪魔も早々見ないだろう。

少女は瞬きを繰り返した後、受付さんへの顔を伺った。


「彼の腕なら保障するよ。 聞いてもらっておいで」


受付からの言葉に少女は少し悩んだような表情を浮かべ、
控えめな声で「お願いします・・」と呟いた。







1階はまずいかな、というスイリの一言で2階に移動。

運のいいことに人は居ないようで、受付の人も
「しばらく2階は塞いでおくよ」という計らい付きだ。

テーブルを挟み、ソファに座った少女とスイリの姿を見てから
2階に設置されているチェストの引き出しの中からメモ帳とペンを取り出す。

手にメモ帳とペンを持ったまま、スイリの隣に腰を下ろした。


「改めまして、スイリ・ミゼルです。 それでこっちが」
「・・助手というか、手伝いのユラ・レクインです」

「レーシュテア高等学院、普通科
 1年のレーナ・メスィドールと申します」


簡潔に自己紹介をして、小さくお辞儀をする少女に
礼儀正しい子だと思いながら、名前と学校学年、科目をメモ帳に書き込む。


「その、依頼 なんですけど」
「うん。 ワケアリなんだね?」

「はい。 だから依頼内容の前に前提情報からになるんですけど・・
 えっと、まず最初に・・ 神竜をご存知ですか?」
「神竜?」
「天界魔界とここを繋ぐゲートを開いてる神クラスの竜のことだよね?」


左手にメモ帳を持ったまま、右手に持ってたペンを口に当てて
疑問符を浮かべた私のすぐ隣で、スイリが即座に説明を入れた。

キッチリ解説されたそうで、レーナと名乗った少女は
少しだけ見開いた目で瞬きを繰り返した。


「詳しいですね・・」
「この世の条理を調べるのが好きなものでね」


ふっと小さく笑ったスイリを視界の端に、メモ帳に神竜と書き足した。


「・・私はその神竜と契約関係にあります」
「契約関係?」
「はい。 契約関係、そして協力関係で。 ある人を守るために、
 ・・ううん、この世を歪めないために。 勿論互いの合意の上です」


単語で神竜とだけ書いたメモ帳の後に、「神竜と契約関係」と書き綴る
スイリは口元を手で覆い、真剣な目でレーナの話を聞いていた。


「ここまでは前提の話です。 それで本題、なんですが
 ・・・一昨日から、神竜との意思疎通ができなくなったんです」
「意思疎通ができない?」

「はい、 呼びかけても何の反応もないんです。
 ブレスが壊れたというわけでもなくて、
 私の魔力が無いわけでもなくて・・流石に可笑しいと思って、」
「ふむ・・・」

「私は神竜ありての戦闘要員なので、1人では確認しに行けなくて。
 連れて行ってとは言いません。 ただ、できれば神竜の安否を、」


レーナはそう言い終えた後、少しだけ眉を寄せ
右手首に光る青い石がいくつも繋がったブレスを左手で抑えた。


「つまり、依頼内容は神竜の安否の確認
 並びに意思疎通の取れなくなった原因の突き止め。
 ・・ということでいいのかな?」

「はい。 ・・っあ、でも私 見たとおり学生で、
 その依頼内容に見合うほどのお金持ってなくて・・」
「・・・ん。 いや、そこはいいよ」
「ん?」
「え?」


メモ帳に依頼内容を書きながらスイリの言葉に疑問符。

疑問符を浮かべたのは私だけではなかったようで、
同じように疑問符の付いた一言が向かいのソファからも聞こえた

隣に座るスイリは小さく口元を緩める


「神竜と契約者だという君の情報代で減額、
 残りは見合う分の物を神竜から直接受け取ることにするよ」

「・・・え。」
「・・神クラスから報酬受け取ろうとする貴方ってほんと発想・・」


というかほんとこの人、情報屋脳だなと思ってしまう
最早職業病の域にまで到達するのでは。

私のぼやきに、スイリは隣で「あぁ、心配することはないよ」と。


「神クラスも何も、僕は彼と友人だからね。
 彼の居場所も行き方も知ってる。 手間なんて何もないよ」
「・・・・・・」

「それに友人の様子が可笑しいと聞かされているのに、
 それでも仕事だからと割り切るほど冷たくないし。 ねぇ、ユラ」
「・・・私に聞かないでくれますか?」


スイリの「神竜とは友人」発言に驚きが隠せないまま、
口をあんぐり開けて、硬直してる少女の表情は見てて面白かった。

・・・・とりあえず、依頼は受けるらしいから正式な依頼書持ってこよう



普通科生徒の十二使への依頼





(そうだ、連絡手段ってことで連絡先も教えてもらってもいいかな)
(あ、はい。 通話機器の方でもいいでしょうか?)
(構わないよ。 ・・うん、確かに。 何か分かったら掛けるね)
(・・・あの、神竜と友人って話・・・ 何者なんですか・・?)

(ふふ。 ちょっとばかし世の中騒がせた程度の情報屋だよ)
(・・・・!?)
(さて。 ユラはどうする?)
(着いて行きますよ。 様子見期間なんでしょう?)







ユラ・レクイン
  5月参加の新卒旅団員。 時空移動による反動を一切受けない特異体質
  この体質のこともあり、スイリと共に行動していることが多い。

スイリ・ミゼル
  サファリ旅団、十二使の一角を担う『知聖』 悪魔だけど聖属性。
  ユラと同じ特異体質持ち。 十二使前は情報屋として活動していた

レーナ・メスィドール
  レーシュテア高等学院の普通科1年。 神竜とは契約関係
  右手首の青い石のブレスが神竜との意思疎通等の役目を果たしてる

戦神の街アニティナ
  レーシュテア高等学院の最寄街。
  8月末は闘技大会開催もありよく賑わっている

神竜
  LD設定では眠り込んだまま起きない竜。 けど創作世界でも寝てる
  天界魔界に通じるゲートを開けている重要な役目を果たす





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ