創作世界

□Grim Night
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「貴方も天体観測なんてするの?」


バルコニーへと続く扉を開けた女性の第一声。

夜空に高く昇った三日月。
月の明かりが、肩下辺りの緑色の髪と赤い瞳を照らした。

バルコニーの縁に左膝を立てて座り、
右膝を降ろして空を見上げていた青年は女性へと振り向く。

気温も高くなり過ごしやすくなった季節にも関わらず、
フードを鼻下までかぶり、黒いコートで身に包んだ青年は
透き通らんばかりの白い肌、かろうじて見える口元をふっと緩めた。


「人も神もそう変わらないんだよ、アリナ」
「そういうものかしら?」


アリナと呼ばれた女性は首を傾げ、ガラス戸の扉を閉める。
バルコニーを数歩歩き出し、青年の隣に立ち空を見上げた


「今日は三日月なのね」
「そうだな」
「貴方の鎌と同じ形」

「あんな月より俺の鎌の方が綺麗だろ」
「ふふ、同意しちゃう」
「アリナは良い趣味をしてる」
「ありがとう」


赤い瞳が細められ、口元を指先で覆いくすくすと笑うアリナ。
青年は血の気を感じられないような真っ白の肌で口を動かした


「そういえば、使い勝手はどうだい」
「大分慣れたわ。 飛ぶ感覚がほとんど無くなってて驚いたの
 数ヶ月飛ばないだけで天使って飛び方を忘れちゃうのね」

「片翼だけで飛べない堕天使も相当絵になるが、
 両翼無くても空を舞う堕天使の姿は美しいな」
「あら、貴方ほどじゃないわ」


黒いフード、黒いコート等でほぼ全身を包んだ青年に目を向ける。
その後月と星の浮かぶ夜空を見上げた。

薄暗い緑色のセミロングの髪が揺れる。


「でも、そうね 美しい、か」
「?」
「聞いたことのあるフレーズだと思って」
「ほう。 単語としてではなく?」

「その言葉を言った人が印象に残ってるの。 私の右翼を斬った人よ
 十二使で、1度だけ相手した 私が殺したい相手・・
 1回しか会ってないけど、美しいって言葉をよく使う印象だった」


アリナのゆっくりと紡いでいく言葉に、青年が相槌を打つ。
彼女は「それで」と呟いた後、どこか遠くに目を向けた

ゆっくりと瞬きを繰り返す。


「・・・綺麗だった」





Grim Night



(あ、アリナ見っけ。 ったくもー、
 そんなとこで1人で何やってんの? 呼び出されてるよ)
(ふ・・1人だとさ)
(ふふ、可笑しなことを言う人ね)

(アリナってば)
(ごめんね、すぐ行くわ)

(連れに気付かれぬ程度に振り返り、彼女は青年へと手を振った)
(青年は彼女へ向けて片手を上げた後、夜空へと目線を戻した)







アリナ・サリン
  アインや姫と同じ組織に属する31歳の堕天使。
  数ヶ月前に十二使のグラシアと交戦、その際に右翼を斬り落とされた。
  今は左翼も失っている。 誰かと会話する場面が見受けられる

???
  今話、アリナと会話していた青年。 黒いコート、黒いフード、
  黒手袋、黒ブーツと全身黒。 フードは鼻が隠れるほど
  深くかぶっており、彼の肌が見えるのは口元と若干の首元のみ。
  アリナ曰く、声は結構低めらしい。





 

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