創作世界

□騎士団第3部隊のお休み
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アルヴェイト王国の誇るシェヴァリエ騎士団、
その一員であるヨエナはその日、珍しく休みであった。

午前のうちから城下町に出掛け、買い物を楽しみ
昼ご飯を食してから城内に戻る。

久々の休み、とはいえ休みが久々なほど何をしていいのか分からない。

桃色の髪を揺らしながら、半分癖になった城内巡回を私服で行う。

赤い絨毯の敷かれた長い廊下を歩くと、
1部屋半開きになっている扉を見つける。

隙間から中を覗くと、壁側一面に大きな棚と
室内中央に立派な黒のグランドピアノがどっしりと置かれていた。

ピアノ。 ピアノか。

昔は習っていてよく弾いたものだが、
騎士団に入ってからは一度も弾いていないかもしれない。

・・・出入りや使用の制限された部屋じゃなかった。
周りを見渡して人が居ないことを確認してから室内に入る。

扉を閉めて、グランドピアノに近づく。

鍵盤の蓋を開ける。
白と黒の鍵盤は汚れ傷1つ見つからない

まぁ城の所有物だ、そんなものがあっては困るだろう

椅子を引き、座り位置を調整する。
白い鍵盤に指を置き、軽く息を吸い込む。

昔覚えた曲を弾き始める。
久々に鍵盤を触ったものだから指が覚束ない

とはいえ、過去に散々弾いた曲は
記憶よりも指が覚えていて自然と指が動く。

途中躓きつつ、躓いた箇所は弾き直して曲は最初に戻る。

曲の2周目。
先程より少し慣れたか、弾く楽しみを思い出した頃


「普通に弾けるのね」


音楽の世界に入っていたヨエナの耳に女性の声が届き、
驚いて弾いていたピアノを中断して顔を上げる

閉めた扉は開かれており、扉のところで凭れかかった
海を思わせるような蒼い髪の女性が、腕を組んで彼女を見ていた

驚きのあまり口が開き、ヨエナはガタリと立ち上がる


「楽器といい選曲といい、良い趣味してるわね」
「め、メーゼ様・・!」
「様はいいわよ。 今日はお互いにオフでしょう?」

「き、聞いて・・・」
「防音室じゃなくて残念だったわね?」


メーゼと呼ばれた女性は口元に手を寄せて薄く笑う。

彼女はアルヴェイト王国、シェヴァリエ騎士団の第3部隊長であり
ヨエナの上司であり、そして部隊長最年少である。

高校卒業から2ヶ月後にして騎士団の部隊長になったという異例
そしてその異例が起きたほどに、彼女は強い。

メーゼは室内に入ると扉を閉めて、ピアノに目を向ける


「隠すほどの物でもないと思うけど。 何か不都合?」
「いえ・・ただここ暫く、ほとんど触らなかったもので
 あまり聞かせられる腕ではないと言いますか・・・」
「・・普通に上手いけれどね。 何か1曲合わせてあげようか」
「え?」


素で返答したヨエナをよそに、
メーゼは壁側に設置された棚へと向かって歩く。

「確かこの辺に・・」と呟きながら棚をガラリと開けた。
中には管楽器、弦楽器等がいくつも置かれている。


「メーゼさん・・楽器弾けるんですか?」
「一番得意なのはヴァイオリン。 人並みだけどね」
「・・そんな難しい楽器を人並みって」
「兄の影響でね。 あぁ、あったわ」


棚からヴァイオリンが仕舞われているらしいケースを取り出した彼女は
棚を閉め、ケースから茶色のヴァイオリンを取り出して構える。


「曲は何がいいかしら?」
「え、な 何がいいんでしょう。 ピアノとヴァイオリンですよね・・?」
「『グロリオーサ』はいかが?」
「あっ、弾けます。 ・・でも言うて昔の話なので、
 途中躓いてしまいそうなんですが・・」

「構わないわ。 私弾き続けるから、入れるところから入って」
「はい。 ・・久々のセッションは緊張しますね、しかも相手はメーゼさん」
「ふふ、楽にしていいわよ」





騎士団第3部隊のお休み



(東側の楽器置きの部屋でメーゼ部隊長と、
 ヨエナさんがセッションしてるって!!)
(あの2人楽器弾けたの!?)

(メーゼ部隊長のヴァイオリン立ち姿ほんと死ぬ程かっこいい
 年下には見えない上にヴァイオリンめっちゃ上手い)
(ヨエナさんの細い指が鍵盤叩いてる姿、
 なんとも言えないくらい綺麗だから見に行こ)
(着眼点)






現時間軸から1年以上前の、メーゼがまだ騎士団部隊長だった頃の話


ヨエナ・プレシアンス
  騎士団第3部隊の女性兵士の1人。 桃色の髪といい、ピアノといい
  正直兵士っていう雰囲気ではない。 後の第3部隊長後任

メーゼ・グアルティエ
  当時騎士団第3部隊長。 当時は髪がまだ肩甲骨くらいまでの長さ。
  部隊長就任は高校卒業2ヶ月後、19歳になったばかりの頃だった

アルヴェイト王国 シェヴァリエ騎士団
  世界屈指の王国直属の騎士団。 旅団ほど詳細は決まっていないが
  とりあえず最低9つは部隊作ろうと思っている。 もう少し欲しい





 

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