創作世界

□『氷軌』は会議参加2回目
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旅団の十二使と長で行われる定例会議。

本部出席だったクロウは会議が終わり一息付いた後、旅団本部を歩いていた。
ただその足は定期的に止まり、彼は辺りを見渡しているように見える。

窓の外に映る湖と森を視界を収め、彼は再度歩き出した。

十二使『氷軌』クロウカシスは先日十二使に抜擢されたばかりである。
定例会議は今回が2度目であり、本部に来たのも2回目である。

旅団本部は見た目もさることながら、部屋数も多く意外と広い。
本部の滞在人数なんて3桁に届く気配すら見せないのに。

クロウは浅く息を吐いた。
人とすれ違うことすら至難だな、と。

後ろから靴の音が微かに響く。
近づいてくる足音と、人の気配に彼が振り向いた。

左頬に火傷の痕、定例会議で参加していた男性が、
瞬きを繰り返しながらクロウを見つめている。


「十二使の・・・」
「・・・」


男性はクロウの言葉に頷いた後、少し首を傾げた。
どうかしたのか、とでも言いたげに。

名はノルテと言ったか、会議で一言も話さなかったが
簡潔な報告が声ではなく文章だったことがインパクトで覚えている。


「予想以上に本部が広く迷ったのだが、俺の部屋がどこか分かるか?」


クロウの問いに彼は頷き、付いてくるようにと手招きを。
歩き出すノルテの後を追った。


「・・・・」
「・・そういや会議でも声を聞かなかったが・・声が出ないのか?」


歩きながら、後ろから彼へと質問を投げる。
ノルテは歩きながら首を横に振った。


「声にコンプレックス?」


彼は再度、首を横に振る。
・・・こういった聞き方では悪いな、


「理由はあるのか?」


ノルテはクロウの質問に頷いた。
彼はその頷きを見ると、質問を投げるのをやめた。

本部の廊下を歩いて行く。

1分近くか、何も話さず廊下を歩いていた頃、彼は呟くように答えた。


「・・・話すのが、 苦手で」


・・・喋った。
初めて聞いたノルテの声に思わず瞬きを繰り返す。

「そうか」と短く返事をする。

どうやら自分が思う以上に苦手だと思った方がいいらしい。

どういうふうに苦手なのかまでは分からないが、
道案内できるのなら人見知りとはまた別の理由な気がしてくる。

何度か廊下の曲がりを繰り返し、ノルテは1つの扉の前で止まった。
扉を指して、クロウに顔を向ける。


「あぁ、この部屋か。 案内助かった」


ノルテはその言葉にこくりと頷き、扉から左に伸びた廊下を指す。


「・・?」
「・・・・正面、」
「あぁ、向こうが正面か。 玄関に出るのか?」


腕を下ろし、クロウの質問に頷くと
ノルテは上着の中に入れていたメモ帳とペンを取り出した。

サラサラと書かれていくのを待つ。

メモ帳を1枚破り、彼へと手渡す。
クロウがそれを受け取ると、どうやら地図のようだった。

正面玄関、クロウの部屋と会議室の位置。
そして事務室と裏玄関の位置。

事務室は・・本部には住み込みが何人か居ると聞くが、
本部のことで困ったらここに行けということだろうか。

メモ帳に書かれた地図から顔を上げ、「ありがとう」と礼を述べる。

ノルテは少し嬉しそうに温和な笑みを浮かべると、
手を振りながら正面玄関とは逆の方に歩き出した。

彼の後ろ姿を見送りながら、自室への扉に手を掛ける。


「(・・・発言数2回か、)」


寡黙もここまで来るとなかなかだな。





『氷軌』は会議参加2回目



(寡黙の十二使? あぁ、ノルテのこと? 良い子よ、全然喋んないけど。
 ・・・声? ・・・1回あったかなぁ、どうだっけ)
(ノルテ? 良い子よ〜、滅多に喋らないけど。
 え? 声? 聞いたことあるわよ。 たまーにだけどね)

(寡黙も極めれば希少価値だな・・)
(ノルテ殿の話であるか?)






4年くらい前の春。 クロウ十二使参入直後


クロウカシス・アーグルム
  大学在学中にされた十二使勧誘の話を保留にし、
  大学卒業直後に勧誘を受諾した若き十二使『氷軌』 当時22歳。
  現時点十二使最年少である。 そもそも大学在学で声掛かることが凄い。

ノルテ・ティフォーネ
  寡黙で知られる十二使『北風』 会議中1回も喋らないとかザラ。
  だったら定例会議の報告どうしてんの、って思うけど
  恐らく「報告書」と「報告用」は別に書いてるんだと思う。
  喋らないだけジェスチャーするんだけど、ジェスチャーが簡易すぎる。

ノヴァ・フェルド
  十二使『凛獄』 火属性派生の炎属性の持ち主。
  ノルテの声は一度聞いたか聞いてないかレベル

ミザキ・セレジェイラ
  十二使『樹花』 水地派生の樹属性の持ち主、2種派生は激レア。
  人柄が人柄だからか待つのは得意。 思ったより聞いてると思う。

ティグレ・プロイビート
  本当に最後の最後で喋った十二使。 異名考え中。 虎人の大男
  ノルテの声は忘れた頃に聞くレベル





 

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