創作世界

□翡翠への見解
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フィアナ・エグリシアという人物をどう見るか。

人当たりがよく、周りのよく見える人物。
笑う姿が印象的で、単純に優しい。

この辺りの返答は想定内だが、
彼女を「妙な人物」だと答える人物は少ないことだろう。

彼女との初対面から4、5ヶ月ほど経ったが
俺が彼女へ抱いた認識は当時からあまり変わっていない。



快晴の空の下、オレンジ色の長髪を揺らしたフィアナと
ダークブロンドの髪が日差しに当てられたクロウは船の甲板へと出ていた。

真っ青な海の上、潮風に当たりながらフィアナは
明るい笑みを浮かべながら空気を吸い込んだ。

真昼だからか甲板には2人以外にもちらほらと人の姿を見かける。


「お前はよく外に居るな」
「あはは、風が気持ちよくて」
「焼けないのか?」
「あ、日焼けならちょっとだけ」


フィアナは手首に付けていた黒いリストバンドをずらし、
リストバンドの外れた手首をクロウに見せた。

よく見ると、リストバントを着けていたところが微かに白いように見える。


「・・これは焼けたうちに入るのか?」
「気持ち程度には焼けたと思うんですけど・・入らないかな、」


小さく眉を寄せて笑みを浮かべるフィアナ。

細められた瞳は日が差し込んだからか、一際透き通っているように見える。
エメラルドを連想させるような翡翠は、ただ、綺麗だ。



対人関係と一言にくくっても種類がある。

純粋に相手を好いている、一緒に居るのが楽、話せるが疲れる、
近づくことすら嫌等、人や関係によってそこは多種多様だろう。

ただ人として好きな人物でありながら、
苦手要素も兼ね備えた奴は早々居ないだろう、と
彼女の翡翠の目を見た時に、ふとそう考える。

エメラルド如く、澄んだ翡翠の瞳は
半年弱ほど経った今でも劣る気配すら見せない。

何者にも揺らがない意志が宿った真っ直ぐな翡翠色。 綺麗だと思う。

そして同時に、それとは別に、全てを見透かしてしまいそうな
あの目が苦手だと思った瞬間は、確かに本心だった。

彼女のその目は、耳にすらしていない事柄を察する洞察力を兼ね備え
恐ろしいまでに彼女に現実を突きつける。 難儀な奴だと思う。

物事を理解したように、全てを悟ったかのように伏せられた瞼、
その口から「何か」が語られることはない。 律儀な奴だと思う。

それでいて尚、彼女の奥底に秘められた信念は何一つとて揺らがない。
年齢不相応だと思いつつ、大した奴だとも思う。

「洞察力があると言っても、要素が無いと分からないんですよ」

彼女は頬を掻きながら、困ったように笑みを浮かべていた。

・・その癖、数少ない要素だけでほぼ全てを引き出すだろうに。

難儀な洞察力と彼女の思考に何度息を吐いたことだろう。
俺がどう気にしたって彼女は揺らがないのに。



「悩み事ですか?」
「・・ん、」
「考えてる、って顔してます クロウさん」


彼女の声に現実へと引き戻される。
見上げながらクロウの様子を伺うフィアナは、翡翠色の瞳を瞬いた。


「いや、大したことではない」
「そうですか? ・・私、帝都来るの初めてなんです
 街巡りが今から楽しみで。 何か行っておくべき場所とかあります?」
「帝都か、そうだな・・何があったか」





翡翠への見解



(・・ん、今帝都で展示会やっているらしいな)
(あら、なんの展示会ですか?)
(さて、アイツの情報だからな・・あぁ、やはり錬金物だな
 ただ帝都での展示会となると規模もなかなか・・・ ほら)
(こ、ここまで来ると錬金も芸術・・!
 凄い・・どうしよう、行きたくなってきますね・・)

(行くか?)
(・・あ、クロウさんも来てくれるんですか?)
(フィアナが行くなら付き添おうかと思っていたが)
(あ、行きましょう! 是非!)






帝都レーヒルへ向かう船旅途中のクロウさんとフィアナさん。


クロウカシス・アーグルム
  十二使『氷軌』 今作1回も十二使について触れなかったけど。
  フィアナに好意が向きそうな予感はしている。
  彼の瞳は、ダークブロンドの髪とよく似た色である。

フィアナ・エグリシア
  弓使いの旅団員。 クロウへの好意をオープンしてしまった人。
  一目惚れ、なんてタイプじゃないのに一目惚れした。
  彼女の瞳はエメラルドを連想させるような翡翠色である。

帝都 レーヒル
  帝国グリフェンの帝都。 海辺で港もあるので船でも来れる。
  蛇足だが展示会の情報を投げたのは十二使『樹花』ミザキ・セレジェイラ





 

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