創作世界

□刹那的に崩れ去る同一
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片側180度、見渡す限りの森。
対して片側180度、並々ならぬ威圧感を醸し出す巨大遺跡。

言われて見れば確かに魔力が濃いような気もする。

神クラスの住む場所ってこんな感じなんだ。
次元が違うけど。 物理的に。

そんなことを考えながらぼんやりと。
巨大遺跡前の数段の段差に腰を下ろして空を眺める。

太陽見えないのに明るいなぁ、遺跡大きいのにここは日陰にもなってないなぁ
と気づいた時、自分の周りを確認したが影は存在していなかった。

・・・・世の中不思議なことは起こるものだな。
絶句しなかっただけ褒めてほしい。

遺跡の石造りの壁に向かいあっていたスイリの元から、
何やらかガラーやらゴローやらの音が聞こえる。

一頻りその音が鳴ったと思えば、
スイリは石段差で死角になっていた場所からひょこっと顔を出した。


「具合はどう?」
「動けるよ」
「ならよかった」


石造りの段差から腰を上げ、軽く伸びをする。

私の隣を通り過ぎ、段差を上って行ったスイリが遺跡入口前へと。
その後を追い、大きな入口に差し掛かった。

遺跡の中に足を踏み入れれば、全体的に白い印象を与える空間だった。
ただしただの空間ではなく、左右、前とその先の道が不規則に続いている。


「・・・迷路?」
「察しが良いね」


スタートは入口、そして少し広いペース。

通路も両手を広げられるほどの広さはある様子だが、
天井まで壁が伸びているため、予想より威圧感がありそうだ。

肩に掛けていた鞄からタブレットを取り出したスイリは、
いくつかの操作を行った後、タブレットを私に渡した。


「貸すよ」
「・・何に使えるんです?」


疑問符を浮かべながらも差し出された物を受け取る。
画面はほとんど真っ白で、画面下部の真ん中ほどに青い丸があった。


「自分が通った道を魔力分析によって認識してくれるソフト」
「はぁ・・ありがたいですけれど。 スイリの分が無くなるんじゃ」
「僕地図覚えるの得意だよ」
「そうですか」


返答は自分の予想以上に淡々としていた気がする。
この人の心配するだけ無駄な気がしてきた。

スイリからこの遺跡のルール解説が始まった。
次の階に行くための階段は1つ。 そして辿り着くルートも1つであること。

罠等は無いから安心してほしい、が
1つの階層が予想以上に広いのである程度覚悟するように。

それに伴い、階段を見つけたら通信で連絡を入れ
入口まで戻ってきて、片方を連れて案内すること。


「1人だったら凄く骨折れる作業だからユラ居てくれて助かる」


と、彼は笑いながらそう言った。

はぁ。 ・・・まぁこの規模の迷路を1人で、って
軽く数時間は余裕で掛かるでしょうね。

利用されてる感は否めないが選択権限が自分にあった上で、
付いていくと言った手前、多分自動的に巻き添えだった。


「僕はこっちから行くよ」
「あー・・なら私こっちで」
「うん。 そんじゃ、また後で」







「こっちに階段あったよー」「階段ありました」
そんなやり取りを合計4回ほど。

時間は大分経っている気がするが、一番端の通路らしい壁に
設置された小さな窓からは、到着時から変わらない明るい光が零れていた。

・・本当に時間感覚が狂いそうだ。
どれくらい経ったんだろう。

スイリから手渡されたタブレットを見ながら迷路を歩いたのは、
最初の1階層2階層ぐらいで、今現在は結局ほとんど鞄の中だ。

ただあの人ほど記憶力が良いわけではないので、
階層スタート地点に戻る時か、発見した階段に向かう時は流石に使う。


両脇、白い壁に挟まれた1通路。
辺りを見渡しながら白い床を歩いて行く。

何時間目の景色かしれない。

代わり映えしないことが、どれほど精神的に影響及ぼしているか。
オマケに時間感覚にも影響出てるし。

スイリ曰く、そろそろ最上階、ではあるらしい が。

平穏がどれほど愛しいか知れない・・・溜息をつきながらも、足を動かす。
左側に続く平たい壁に、一箇所 入り込めそうな通路が目に留まった。

いつもの速度で歩き、差し掛かった通路に差し掛かる。


「・・!!」


一瞬で表情が変わった。
今までの思考が全て飛んだ。


人、
銃、構えて、



銃声が、木霊した。







――嗚呼、深淵達よ 汝は何を求む。

――嗚呼、契約者よ 汝は何を望む。


おお、ドレッドよ

汝の願うままに


覚えておくがいい、契約者よ
世界は成るべくして成っている

ただし、枷を宿命とし受け止め生きる者が存在するからこそ
この世界が成っていることを忘れてはならぬ





刹那的に崩れ去る同一



(赤が散る)

(何を見た)






1万字レベルの作品にした方がよかったんじゃ、って後悔しています。
(タイトル決めるの凄く苦戦する)


ユラ・レクイン
  一般旅団員な悪魔。 赤く長い髪を右側でサイドテールにしている。
  蛇足だが卒業高校はメジスト高等学園。

スイリ・ミゼル
  旅団十二使『知聖』の悪魔。 膨大な情報量を蓄えたおかげか、
  地図がなくても道を瞬間的に暗記する。 方向感覚も失わない。





 

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