創作世界

□再会の科違い同級生
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夏、ジリジリと刺すような陽射しの下、
少々大きめの弓を片手に街道を走る姿。

走りながら後ろを振り返った際に揺れたオレンジ色の長い髪が揺れる。

肩と髪越しに振り向いた、後ろには1匹の魔物がおり、
彼女を狙って街道を突き進んでいる。

小さく息を切らしながら彼女は足を止め、矢を取り出して弓を構える。
迫る魔物を視認しながら、ギ、と弓を引いた。

瞬間、どこかからか現れた真っ白の馬が魔物の頭を蹴り飛ばす。

驚いて放ちかけた矢を留める。
よくよく白い馬を見れば、頭から一本の角が伸びていた。

一角獣、ユニコーンだ。

ユニコーンの姿を認識した彼女と魔物の間に、長い金髪の女性が割って入る。


「ご無事ですか?」
「あ・・、」


金色の髪とその後姿を視界に収めた弓使いの彼女は小さく目を見開いた。
驚いたように繰り返される瞬きに、金髪の女性は気づかない。


「・・ルゥさん?」
「え? 私のこと知っ、」


呼ばれた名の本人だったのか、女性は金髪を揺らして後ろを振り向く。

オレンジ色の長い髪、彼女を見つめる綺麗な翡翠色の瞳。
言葉をなくして瞬きを繰り返したのは、ルゥと呼ばれた女性の方だった。


「・・・フィアナ・・?」
「やっぱりルゥさんだ」


フィアナと呼ばれた女性は弓を抱えて笑みを浮かべた。
2人の歳は変わらないように見えるだろうか。

ルゥはフィアナの姿を見て頭の上に疑問符を飛ばす。


「フィアナは、 あれ? 普通科だったのに、なんで武器を持って・・?」
「詳しい話は後ほどに。 助けていただいた後でなんですが、
 もう少しだけ手貸してくれますか?」


ユニコーンに蹴られた後、起き上がってきた魔物を横目に、
フィアナは再度弓を構えた。

ルゥは少しだけ瞬きを繰り返した後、手に持っていたバトンを握り直す。


2人揃ったこともあり、フィアナを追っていた魔物は難なく倒された。
街道の上、一息ついた2人が改めて挨拶し直す。


「改めてお久しぶりです、ルゥさん。 高校以来ですね」
「ご無沙汰しています。 そういえば連絡先の交換していませんでしたね」
「あはは、ほんとに。 助けてくださってありがとうございます」

「・・フィアナって普通科、でした よね?」
「普通科卒業です。 弓に関しては、5ヶ月ほど前から習っていて」
「ご 5ヶ月前?」


信じがたいように復唱するルゥに、フィアナは温和な笑みを浮かべる。

胸元で構えられた弓は、初心者としても、
彼女の背丈から見ても、少々大きいように感じる。


「だっ・・えっ、 は、早すぎ・・というか寧ろ危ないんじゃ・・!?」
「よく驚かれますが、一応旅団からも許可は出てるんですよ」


笑いながら胸元のポケットから旅団員証を見せるフィアナに、
ルゥは動揺が隠せない様子で。

2人は高校でのクラスメイトだった。
ルゥは特戦科、フィアナは普通科で。

騎士団や旅団等の組織も、本来ならば。

本来ならば特戦科で3年訓練を積んだことを前提とした上で、
正式に入団許可なり、応募資格なりが下りるのだ。

2人は19歳、高校を卒業したのは去年の話だった。
高校卒業からまだ1年半、 フィアナは特戦科には通わなかった。


「せ、正式な旅団員・・?」
「そうなんです。 一応4ヶ月前から」
「・・・フィアナが戦闘員・・・流石にちょっと意外、でしたね・・」
「ふふ、特戦科通っていたらルゥさんと同じ授業受けれたんですけどね」


彼女はくすくすと笑みを浮かべる。

フィアナはあまりアグレッシブな方ではない。
図書委員に文化系の部活だった彼女は、どちらかと言うとインドアな方だ。

運動神経は悪いと呼ぶほどではなかったが、
テストなどでは身体測定よりも筆記テストの方が優秀だった。

未だ動揺が抜けないらしいルゥは、彼女へ質問を続ける。


「・・あの 魔術も使えるんですか?」
「? はい。 特化は風なんですけど」
「あ、そっか。 風なら結構・・・」
「結界が張れるので、勝てない魔物からも逃げれちゃうんですよね」

「成程・・ それにしても普通科生徒が、
 卒業1年で旅団員というのは・・私初めて聞きましたよ」
「やっぱり珍しいみたいでよく言われます」
「ですよね」


互いに笑みを浮かべるフィアナとルゥの間を、夏風が吹いていく。
ルゥは思い出したように顔を上げた。


「そういえば、どこに向かうところで?」
「ヴァンディードの方に。 雰囲気が素敵だと聞いていて、行ってみたくて」
「あ、それでしたら微力ながらご一緒してもいいですか?」

「私は凄くありがたいですけど・・ルゥさんの目的地は?」
「私はハーフェンの方へ。 ここからなら通り道みたいなものですから」
「・・それなら、お言葉に甘えちゃいますね。 よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」


笑みを浮かべて、2人は南の方へと歩き出す。
2年強の再会、彼女達の会話は弾んでいた。


「ルゥさんは召喚術者なんですね、私初めて見ました」
「珍しいそうですね」
「存在は知ってたんですけど・・こんな身近に居たとは」

「召喚獣との契約って何かと限られますからね。
 フィアナは・・あ、旅団員って言ってましたね」
「ふふ、まだまだ新参ですけれど」
「旅団、楽しいですか?」
「楽しいですよー。 物理的にも気持ち的にも世界が広がった感覚です」





再会の科違い同級生



(・・そういえば、フィアナ なんで追われてたんですか?)
(あはは、街道歩いてたら突然突進する勢いで
 こっちに向かって走ってきちゃって)
(さ、災難でしたね・・? 無事で何よりですけど・・)
(無事な辺り幸運ですね。 ふふ、ルゥさんとも再会できましたし)






2人ともレーシュテア高等学院の卒業生。 同学年で同級生だった。
更に更に 今居る地点はレーシュテアに比較的近い。


フィアナ・エグリシア
  高校を普通科で卒業して、5ヶ月前から弓を習い始めた新参旅団員。
  因みに種族は人間。 図書委員に文化系の部活。 彼女らしい。
  蛇足だが成績は優秀な方で上位20位前後だとか。

ルーエ・ディ・ティエル
  愛称はルゥ。 本名よりも愛称の方で呼ばれてる。 書き手の私もそう。
  高校は特戦科卒業。 召喚術者で属性は「光」 因みに種族は天使。
  今は某組織への対策組織みたいなところに入ってサポート役に回ってる





 

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