創作世界

□部隊長候補の19歳少女
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6月頭。 夏に向けて日に日に暑さが増していく時期。

王城の巨大な門と白い甲冑を来た門番兵士2名を前に、
蒼い髪を肩ほどまで伸ばした彼女は、左手に1つの白い封を見せた。


「ランドル・プルーデンスさんとの面会をご所望いたします」


若い容姿とは裏腹に凛とした佇まいと声色。
鞘に収まった長剣を腰に提げているが、買い物に行くかのような軽装だった。

藍色の瞳を瞬きさせながら、彼女は臆さず見据えている。

門番2名は思わず顔を見合わせた。



アルヴェイト王国、シェヴァリエ騎士団第9部隊長
ランドル・プルーデンスの直筆である紹介状。

連絡は滞りなく行われ、彼は10分としないうちに門に姿を見せた。

胸元や肩を鎧で覆って、部隊長特有のマントを翻し、
城内から出てきて広い庭を歩き門へと近づく男の姿。

門越しに少女と形容しても不思議でない彼女の姿を見るなり、
ランドルは小さく「来たか」と口元に笑みを浮かべた。

小さく頭を下げ、揺れる蒼い髪。

ランドルは門の手前にある門の開閉ボタンを操作すると、
ギギ、と鈍い音を立てて、門は左右にそれぞれ開かれていった。

向かい合うように立ち、見据えている藍色の瞳を見つめ返す。


「まずは答えを聞こうか、メーゼ」
「お受けするわ」

「お前さん全くと言っていいほど勿体ぶらねぇなぁ」
「そっちが直球に聞いたんじゃない・・・」
「はっは、違いない」


彼女の倍ほどは生きているであろうランドルがからからと笑う。
「うむ」と頷いた彼は門番する兵士2人に目線をやった。


「確かに俺の正式な客人だ。 呼び出しご苦労さん」
「はっ」
「メーゼ、城内で話すか」
「構わないわ」


ランドルは門の開閉を再度操作し、門が閉じられていく。
メーゼと呼ばれた少女は部隊長に連れられて城内へと向かった。


「・・・ランドル部隊長って直々に紹介状書いたことあったっけ?」
「俺が知る限りは初めてなんだけど・・?」
「えぇ・・・彼女何者? つーか若かったな?」
「大人っぽかったけどそう思わせなかったよな。 20前半、とかか?」







「にしても驚いたな、もう少し待たされるかと思ったぜ」
「あんな内容の勧誘を何ヶ月も放っておけるもんですか。
 私なりにプレッシャー感じたわよ・・」
「はっは、そいつは珍しいことを聞いた」


赤いカーペットが敷かれ、白い壁に挟まれた
城内の廊下を歩き進んでいくランドルとメーゼ。

あっけらかんとした笑みを浮かべる部隊長に、
メーゼは小さく眉を寄せて息を吐いた。


「そういえばランドルさん」
「ん?」
「今のうちに渡しておくわ」


メーゼの呼び止めに足を止めるランドル。
彼女はズボンのポケットを探ると、通信機器ほどの薄めな機械を渡した。

受け取ったランドルは不思議そうに見つめている。


「こいつは?」
「旅団に在籍した3ヶ月間にこなした依頼一覧のデータ」
「ほう。 なんでまた」
「判断材料の1つになるだろうと思って。 対人許可証も得ているわ」


けろっとした表情で言い切ったメーゼに、彼は少しばかり瞬きを繰り返すと、
ふっと笑みを浮かべ、口角を釣り上げてメーゼを視界に入れた。


「・・お前やりやがったな?」
「『ランドル部隊長が認めた』 信用度によって受ける印象が
 変わる発言だとは思うけど口頭だものね。 私もナメられる趣味はないの」



彼女は高校3年レーシュテア在学時に、
第9部隊長であったランドルから、騎士団への勧誘がされていた。

卒業後、同じ場所で仕事をしないか。
来年頃の引退を考えている先輩が部隊長に居るんだ。

大人数の指揮をするのは初めてかもしれないが、
お前は頭の回転が早いし、何より強い。

それだけで部隊は鼓舞される。 充分素質がある。

当時の返答はまだ保留だった。
返事は卒業後かもしれないとも伝えて。

レーシュテア高等学院を卒業した後の彼女は、アルヴェイト王国
王都ラクナーベルから北にあるアベリアで一人暮らしをしていた。

・・そして今日、メーゼはその勧誘の回答を伝えに来たのだった。


「ちょうど今週末から兵士の入団試験が開始する。
 前にも話したが2週間ばかりの長期試験だ。
 お前は特別枠ではあるが、同じ内容の試験を受けてもらおう」

「試験対象者は2週間どこで過ごすのかしら?」
「飯と寝る場所も基本城提供だ。 城内の一角が騎士団の宿舎スペースでな。
 複数人部屋になるが・・・レーシュテアだったメーゼは慣れてるか」
「ふふ、寮生活が懐かしいわね」


そうして年齢不相応に大人びた笑みを浮かべる彼女は、
高校の卒業式から3ヶ月が経ったばかりだった。





部隊長候補の19歳少女



(後は・・そうだな。 今の第3部隊長にも挨拶しに行こうか)
(・・・今更だけど、部隊の人達差し置いて私が部隊長になって平気なの?)
(うーん、まぁ最初は多少反発あるかもしれんが。
 お前さんなら大丈夫だろう。 気に病むタイプでもないだろ?)

(相当なことがないと揺らがないんだもの・・ランドルさん知ってるかしら?
 私、対人許可証も得たから闘技大会世界部門の参加権があるのよ)
(・・・18でか?)
(もう誕生日来てる・・けど、まぁそうね。 許可証得たの18だし)
(こいつは驚いたな、最年少じゃないか)






メーゼの高校卒業後


メーゼ・グアルティエ
  3月に高校卒業して一人暮らしして旅団に在籍して、
  4月に対人許可証を得て世界部門参加権得て、5月末に誕生日迎えて、
  6月頭に部隊長勧誘受けた。 驚きの高卒19歳。

ランドル・プルーデンス
  高校2年後半からのメーゼを知ってる騎士団第9部隊長。
  ヒゲともみあげのおっちゃん(当社比) 多分35歳強くらい。
  メーゼを部隊長に推薦した第一人者。





 

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