創作世界

□退任検討の若き第3部隊長
1ページ/1ページ






19歳にしてアルヴェイト王国直属騎士団第3部隊長の肩書。

4年経った今や、私の部隊は騎士団でもトップを争うできた部隊だ。
まぁ私が手を付けたのだから自然な気もする。

そしてその4年続けていた、
騎士団部隊長という職を辞めようかと検討している。


まだ検討段階ではあったものの、国王と騎士団長に相談を持ちかけ、
そして最後の相談相手として、私を騎士団部隊長に推薦したランドルさんへ。

やっぱり私自身部隊の指揮があまり向いてない気がして。
隊員上がりではないからか、今でもあまり良く思われてないし。

騎士団全体の士気に関わるなら、等と理由にしては少々弱い理由を、
半分言いくるめるように伝えて。

正直国王と騎士団長からの反応は微妙なものだったが。

似たような内容を第9部隊長であるランドル・プルーデンスに伝えたところ、
「ふむ」と頷くように呟き、私をじっと見据えた。


「まぁメーゼがそう望むなら止めないが」
「飲み込みが早いわね」
「年上に向かって言う言葉か」


ケタケタと笑いを零すランドルさんに、小さく笑みを浮かべる。

国王と団長は渋々ながら、って感じだったもの。
だからすんなり頷く彼の反応が新鮮だった。


「だが1ついいか?」
「何?」
「本当に性分だけで済む話か? 隊員の不平不満は当初よりは
 随分落ち着いただろうし、そもそもお前は気にしないタチだろう」


それだけではないだろう、と言いたげに。
見据えられた瞳に、返すように瞬きを繰り返した。

・・だから彼が騎士団に属する数少ない理解者だった。
そう思うと私のことを知られすぎたように思う。

肩を下げて瞼を伏せ、諦めたかのように薄く息を吐き出した。


「・・ランドルさん鋭いわねぇ」
「はっは、たかだか数年だがお前の先輩させてもらったからなぁ」


彼に出会ったのは高校2年生の下半期、6年ほど前のことだ。

当時はなんていうか、浮いていた時期だったから、
ランドルさんの存在は本当に助けになった。

だから、なのかもしれない。
彼が理解者であったのも、伏せていたことに気づかれるのも。


「・・動作自体に支障は無いんだけど、体調が優れなくて」
「ん」
「月日を追うごとにしんどくなるんです。 多分睡眠、だとは思うのだけど」
「あぁ・・お前さんの眠りに関しては本当に深刻だからな・・・」


その単語が出ただけで、一気に納得したような表情をするランドルさん。

意識代わりが無い私の睡眠は本当に短いもので、
1ヶ月眠らないことも珍しくなかった。

それで動ける身体をしていた、
更にほとんど不調の片鱗が無かったのが不思議だ。


「ランドルさんも部隊長の身だからあまり時間も無いし、
 私に時間を割いてもらうのも、なんだと思って。
 私1人の体調で部隊が2つ動きづらくなるのも問題があると思いますし」
「うむ」

「そうしたら理解が得れていて時間の融通も利きやすい、
 旅団員のディスを頼るのも手かなと思っていて」
「ふむ・・1番の理由はそれだな?」
「はい。 まぁ、向いてないとか士気とかも多少は本心だけど」


そう告げると彼は明らかに呆れたように肩を上げて笑った。


「なんで伏せるんだ? 体調と言やー団長も納得するかもしんないのに」
「私の不調は表に出ないから」


体調が優れないのも身体的なものではなく、
どちらかと言えば気分的なものだ。

多少の数値ブレくらいはあるのかもしれないけど、ぱっと見、
否、真剣に見たとしても動きに差が出たようには見えない微弱なものだろう。

カウンターを聞いたランドルさんは、また納得したように「ふむ」と頷いた。


「まぁ、身体が第一だからな」
「・・」
「大事起こらないうちに身を引くって意味なら、英断なのかもな・・
 騎士団としてはメーゼほどの人材が離れるのは凄く惜しいが」
「騎士団長にも同じことを言われたわ」


ケラケラと笑い出すランドルさんに、私も笑った。
全く同じことを言っている。 騎士団の意向は確からしい。

4年、 長いようで短かった、この年月は。

高校生活の後半、ちょっと腐っていたのが
不思議だったくらい発散できたように思う。


「・・騎士団での生活は、なんだかんだ結構楽しかった。
 大人数を指揮するのも初めてだったし、騎士団の内部も知れた」
「ん」
「高校生の頃から何かと付き合ってもらって、
 騎士団にも勧誘してくださって・・ランドルさんには、感謝しています」
「おいおし、よしてくれ。 湿っぽいのは似合わん」


小さく頭を下げると、ランドルさんは手を横に振りながら
顔を上げるように、と言いたげなジェスチャーをした。

・・・嗚呼、 踏ん切りは付きそうだ。





退任検討の若き第3部隊長



(後何ヶ月だ?)
(上手く行けば2ヶ月、長引いて半年かしら。
 後任も目処は立ててるし・・・後の不安要素はシオンかな)
(シオンかぁ。 シオンかぁ)
(どうしてこうなったのかしら・・? まだ並に生きてたはずなのに・・)

(19歳から部隊長なっといて並とは言えねぇだろうよ)
(高校生に部隊長勧誘する貴方も相当だと思うわ)
(騎士団と言えど半分くらいは実力主義だからなぁ。
 そーいや後任の目処立ってるって、誰だ?)
(ランドルさん知ってるかしら・・ヨエナって子なんだけど)






騎士団組も掘り下げたいなぁ


メーゼ・グアルティエ
  当時23歳、多分。 19歳で部隊長になってから、
  4年間第3部隊を率いていたカリスマ系部隊長。
  彼女の戦闘力は勿論読みもヤバイと部隊で噂に。

ランドル・プルーデンス
  当時39歳前後、多分。 第9部隊長率いるのも結構長い。
  他部隊の面々とも会話したり話しかけられたりすることが多いので、
  第9以外の部隊の話もある程度知ってる。 シエルは知ってる。





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ