創作世界

□十二使スカウトの進捗
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新十二使候補となるクロウカシス・アーグルムへの勧誘を終え、
クレールド大学から帰路に付いたグラシア・クウェイント。

宿を取っていた大学最寄り街の旅団支部執務室に戻り、
執務机とセットらしい椅子を引き、腰を下ろした。

鞄の中に入れ持ち歩いていたタブレットを机の上に出し、
連絡を行うページを開くと、目的の人物の名を探し出した。

[Heino]

最近の会話ログが残りつつもそれ自体には然程目を通さず、
グラシアはタブレットの操作を行い字を綴り始めた。

―――――
Gracia:やぁ、旅団長。 今通信構わないかい?
―――――

送信した発言を読み返し現在時刻を見る。
まだ11時、時差があったとしてもこの時間ならまだ起きているだろう。

少しばかり返事を待つため画面を開いたまま。
数分とせず、彼が旅団長と呼んだ相手からは返事が来た。

―――――
Heino:はい、どうぞ
―――――

了承の言葉を見たグラシアは小さく頷くと、
タブレットを操作し相手へと通話を掛けた。

数秒のコール。

それが途切れるのとほぼ同時に、バチンと何かが弾くような音。
椅子に座るグラシアの向かいの壁付近に映像が現れた。

中折の帽子を被ったブラウンの髪をした男性が映る。
柔らかそうな表情、顎からは数センチほどの髭が綺麗に伸びていた。

背景はどこかの室内の壁のようだった。
旅団所有の飛空艇の中だろうか。

帽子を脱ぎ近くに置いたと思われる旅団長は「お疲れ様」と一言声を掛けた。


「”クロウカシスの勧誘報告かな?”」
「相変わらず話が早いな。 ご想像の通りだ」
「”どうだった?”」
「返事は1年ほど保留にさせてくれとのことだったよ」


クレールド大学で本人から受け取った返事をそのまま伝える。
旅団長、ハイノ・エルンストはその回答に頷きを見せた。


「”クレールド生だったものね、まぁ想定内だ”」
「卒業後のことは未定だが前向きに考えるとも言っていた」
「”そうかい、把握したよ。 直接見た感想はどうだった?”」
「ふむ」


旅団長からの問いに、グラシアを手を顎に当て悩む素振りをした。

間近でその腕を見たわけではない。
いかんせん彼が受けている授業風景は遠巻きに、望遠機能越しだったのだ。


「遠目からで少ししか拝見できなかったが、なかなかだね。
 物理なら・・そうだな、ノルテと良い勝負じゃないか?」
「”それなら彼が加入した時にはノルテとのマッチングになるのかな”」
「それは観戦楽しめそうだ」

「”1年後かぁ、試合観戦楽しみだねぇ”」
「旅団長、もう早加入前提で考えているな?」
「”そりゃぁもう。 彼は来るような気がするんだ”」


映像越しでクツクツと笑みを見せるハイノに彼は小さく肩を上げた。

言い分に根拠というものを一切感じないが、
今までを思い返すと旅団長の発する『気がする』は高確率で当たる。

相変わらずだな、いつもの奴か、自分には分からないけれど。
それが直感なのか第六感なのか僕には知りえないけれど。

クロウカシスの返答を聞き終えたハイノは、少し悩んだ表情を浮かべた。


「”そうなるともう1人ピックアップしないとな・・”」
「彼だけを待つとなると引退時期遅れそうだね。
 引退考えている人物はもう1人居ることだし」

「”グラシアは先日の候補者の中で気になった人は居たかい?”」
「・・僕に聞くのかい? 何かしら偏るよ、多分」
「”うーん”」


元々は十二使で高齢の先輩が引退を検討という話から始まった新幹部探しだ。
更に引退を検討している十二使はもう1人居る。

前者は前々から申告していたため、後任が見つかり次第引退だと思われるが、
後者は1年後くらいには引退したいとの希望を出していた。

第一候補であるクロウカシスが1年の保留と返事した今、
クロウカシスが十二使に就任する時は後者の十二使と入れ替わりだろう。

それではいけない。 第一優先は前者の方であるのだから、
もう1人の候補を早めに探し出さねばならない。

引退がどうこうと言い出したのは決してここ最近の話ではないし、
いくら強いとは言え引退を本気で検討している者を、
あまり長引かせるのも良い判断ではないからだ。


「旅団長としては候補の目星はついてるのかい?」
「”気になっている人は幾人か居るよ”」

「現時点での第一候補は?」
「”うーん・・・・雷属性の子、かな?”」
「(誰だ・・・)」





十二使スカウトの進捗



(ヒントが少なすぎないか?)
(女性だよ)
((誰だ・・・・))

(ふふ、ヒントを聞きながら見つけ出すの、どこかの特定ゲームみたいだね)
(旅団長はそういうの得意そうだな)
(推理系や謎解きはね。 素で腹の探り合いしてるからね・・)
(あぁ・・・あの絞り込み方は相当だろうと毎度感心しているよ)






クロウの勧誘後による旅団上位。


グラシア・クウェイント
  ゲームに関してはあまり詳しくない。
  多分するとしたら捜し物や脱出ゲームみたいな奴。

ハイノ・エルンスト
  上記のように謎解きや推理系、矛盾探しみたいなのは得意。
  タワーディフェンスとかも好みそうな気はする。





 

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