創作世界

□学院祭前の放課後3年生
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太陽が照らす時間も短くなりつつある秋に差し掛かるこの頃、
レーシュテア高等学院にある3学年の教室にて。

後ろの方の席に座り、勉強机を向かい合わせては
宿題に励んでいる2人の男子生徒の姿があった。

学院祭の準備期間中の影響か部活動特有の声は無く、
そのかわり賑やかな会話がそこかしこで沸き起こっていた。

彼らのクラスも劇の発表に向けて準備している頃のはずだが、
大半のメンバーは舞台を使っているため大方出払っている。

教壇の前にあるはずの机は半分ほど後ろに下げられ、
小道具大道具の作業スペースとなっていたはずだが、
それぞれ休憩に向かったため人気は無い。

休憩別にいっかぁと判断を下した男子生徒は2人、
教室に残って出されていた宿題と格闘しているのであった。

カリカリとペンの走らせる音に、
エルフ耳の方の男子生徒が向かいに座る生徒へと顔をあげた。


「そういやディスってさぁ」
「んー?」
「卒業後の志望って旅団だっけ?」
「おー」


ディスと呼ばれた生徒は宿題から目を離さないままペンを走らせる。
彼を呼び止めたカデンは綴る作業を完全に手を止めた。

高校では普通科と特戦科の2種類があるが、2人はどちらも後者だ。
授業として戦闘技術を習う特戦科。

彼らは卒業後何かしらの戦闘職に付くことが多い。

延長でもう少し学びたいという者は大学に行き、
片手間に傭兵やら旅団やらの依頼を請け負うことが多いと聞く。


「俺も旅団志望なんだけど、俺弓じゃん」
「そうだな」

「1人だときっついからさ、依頼で1人無理な時ディス捕まえていい?」
「いーぜ」
「うっしゃ、仲間ゲット」


カデンは小さくガッツポーズを作り、改めて宿題に向き合った。
特に躓くことなく記入をしていく。

ディスはと言うと綴る手を一瞬止めて小さく首を傾げた。

高校3年生、それぞれが進路を確定させる時期だろう。
生徒内でのそう言った話題は多く、ディスにも時々同じ頼みが掛かっていた。

なんせ彼は剣を扱う近接だ。
魔術師やら遠距離から声が掛かりやすいのは自然なのかもしれない。

宿題をこなしながらカデンは独り言のように呟く。


「メーゼはどこ行くんだろうなぁ、
 あんだけ強けりゃスカウトでも来そうな気はするけど」
「あいつ今あれ」
「?」

「騎士団部隊長としてスカウト来てる、アルヴェイトの」
「おっ、おおおお!?」


同じ3学年で同級生であるメーゼの進路に疑問を入れれば、
彼女の腐れ縁と言う彼からこの返答。

ディスなら聞いてるんじゃないかと思い口にした独り言が、
少々思いがけない形で返ってきた瞬間である。 宿題する手が止まった。

いやいや。 高校生で部隊長スカウトって。

混乱するカデンをよそに、ディスは宿題を差し出しある問題をペンで指した。


「これ回答2択で迷ってんだけど、どっちだったっけ」
「んー? あー、これはこっち」
「あ、こっちか」


躓いてた問題が解け、再度ディスの宿題のペースが早まる。

一方カデンはと言うと先程の衝撃報告がまだ残っていたようで、
動揺と言うべきか、少々怪訝な顔をしていた。


「っつーことは部隊長・・?」
「スカウト来てるだけで返事は保留してるっぽいけどどーなんだろ」
「相変わらずメーゼやべーな・・・あれが高3だぜ・・?」
「ほんとにな」


思わずくつくつと笑いだすディス。

廊下からぱたぱたと駆けてくる靴の音に2人とも顔を上げた。
足音の主は2人の居る教室の前で止まりその姿を見せる。

ブレザーにスカートを来た女生徒は、
2人の姿を視界に入れてから教室内に入ってきた。


「あれ、ジュナどしたん? メーゼのメイク合わせてたんじゃなかったっけ」
「忘れ物しちゃって取りに来た!」
「成程」


カデンの問いに返事をしながら、ジュナと呼ばれた女生徒は自分の席に向かい
机の脇に下ろしていた鞄をガサゴソと漁る。

目当ての物が見つかったのか「お邪魔しました〜」と教室を出てい・・・
こうとしたジュナの足が廊下に出る前に留まった。

思い出したように「そうそう」と頷いて振り向く彼女に、
ディスとカデンは顔を上げて続く言葉を待つ。


「メーゼのテストメイク終わったんだけど、2人とも見に来なーい?」


ジュナからの申し出に2人は目を合わせると小さく頷いた。
ペンを宿題の上に置いてはそれぞれ席から立ち上がる。


「行くかぁ」
「気になるしな」





学院祭前の放課後3年生



(2人とも宿題進んだー?)
(大半終わったー 後は大体喋ってた、俺が)
(カデン結構喋るよな)
(なんか・・無音があれなんかな・・)

(あたし人の声が聞きたいから喋りかけるよ)
(ちょっと分かる。 メーゼどうなった?)
(髪触るのが凄く楽しかった)
(それジュナの感想じゃん)






ディスは居るのにメーゼは不在という珍しさ。


ディス・ネイバー
  レーシュテア特戦科3年生。 対人授業では大半剣向きの木刀を扱うが、
  実践授業となると大剣を扱う。 剣より向いていると言われた。

カデン・アガフィア
  特戦科3年。 メーゼ、ディスとは2年、3年と同級生。
  弓使い。 弱いわけではないけど遠距離武器はどうしても。

ジュナ
  存在は決まってたけれど、今回でようやく名前が決まったっていう人。
  科は未定。 ヘアスタイリスト目指してて人の髪を触るのが趣味。





 

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