創作世界

□休憩覗き見る談話室
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旅団本部の談話室は基本的に人が居ない。

定例会議の前後には何人か集まっていることもあるが、
それは誰かが居るから留まるのであり、
誰も居なければ入り浸ることもなく帰る者が多い。


日差しも強くなってきて夏本番を感じさせる7月、
定例会議が終わり数時間もした頃。

談話室に置いてあるはずのメモ用紙を取りに、
十二使『真栄』セラ・セイクリッドが訪れた時だった。

黒と白の聖職者衣装を纏った彼女が談話室の前で足を止めた際に、
半透明の黒いヴェールがセラの背へと収まる。

腰まである黒紫色の髪を揺らし、数度のノックの後に扉を開けた。

人気がない・・・ように思えたが、意外なことに数人で座れる
横長のソファに誰かが寝転がっているようだった。

あの青緑色の短めの髪は十二使『知聖』のスイリ・ミゼルだろうか。

眠っているならば起こすのは悪いなと、
物音を立てないようにゆっくりと移動し壁側に設置された棚へ。

棚の引き出しを開けると十二使のミザキが置いたのでだろう、
あれば使うような細々した消耗品などが並べられている。

・・あれ、中身移動したのだろうか。
前はここにあったのに見つからない。

一度引き出しを閉め、1段下の引き出しを開けると、
右手前側にメモ用紙がプラスチックのかごの中に束で入っていた。

目的の物であったメモ用紙を30枚ほど手にし、
手にしていたメモ帳に紙を挟む。

そして帰ろうと踵を返した時、再度スイリを見つめた。

・・・意外にも程がありますわね。
用紙が見つからなかった時に声掛けられるかと思ったのに。

彼と言えば情報屋、人の発言動作には特に目ざとい。

自分が今メモ用紙を取りに来たことが知られて困るようなことはないが、
彼が休んでいるのを見るのは初めてだった。

クールで隙がないあのメーゼですら寝顔を見たことあるのに。

実際はソファで座って目を瞑っているのを見かけただけで、
クロウ曰く「あれは寝てない」らしいが。

彼女の話は置いといて今はスイリだ。 とにかく珍しかった。
十二使として同僚であった期間はメーゼよりも長いのに。

物音を立てぬようにスイリの傍にまで移動する。
衣装の裾が床に付かないようにゆっくりとしゃがんでまるで観察するように。

彼は手首を目元に当ててるため起きてるか寝てるかの判断が付かないが、
最初から起きていたならノックで気づいて反応する、ように思う。

観察のように見つめはじめてそう時間も掛からず、
10秒ほどして不意に彼は腕を持ち上げてこちらを視認した。


「・・わ、びっくりした」
「おはようございます、スイリ様」


本当に寝起きだったのかあまり出ない声量、
ただ本当に驚いていたのかは声だけでは判別できず。

彼はセラを視界に入れては幾度かの瞬きを繰り返した。

セラは小さく肩を上げて笑うように。


「眠られているのが物珍しくてつい・・、 起こしましたか?」
「あぁ、いや、もう起きなきゃいけないから。 ありがとうセラ」


目元を少しだけこすり、ソファから身体を起こすスイリ。

身体を起こして目線の高さが合わなくなったセラは、
その場でゆっくりと立ち上がった。

彼はセラのそんな動作を見つめて、
ふと「いつから居たの?」と笑いながら聞いた。

セラは聞き返すような瞬きを、そして笑みと共に返した。


「いつからだと思われます?」
「ん、意外と意地悪なんだね」
「スイリ様のことですから分かってて聞いてらっしゃるのかと思って」
「僕をなんだと思ってるのさ」


だって貴方様は世界一と謳われた情報屋ですもの。
それは言葉にはせずに、微笑みを1つ。

左側の髪を掻き上げたスイリの首元には、
薄っすらと白い使印が浮いているのが見える。

僕が肌白い方のエルフだったら肌と同化して見えなかっただろうに、
なんてぼやきをいつか聞いた記憶がある。


「ノックの音は微かに聞こえたんだけどまたすぐ寝てしまったみたいで、
 ノックが何分前だったかも覚えてないんだ。 ちょっと不覚だけどね」

「珍しいですわね。 お疲れだったのでしょうか?」
「うーん、最近寝てなくて」
「あら・・・お仕事ですか?」
「近いようなものかな、半分くらいは興味心から」





休憩覗き見る談話室



(そうだ、ミーザが魔物除け置いてくれてるよ。 拝借しといたらどうかな)
(あら、本当ですか? どこでしょう・・)
(引き出しの3段目。 因みに4段目はティグレが
 依頼報酬で貰ってきたお酒が入ってるよ)

(お酒はちょっと・・あ、ありましたわ。 ・・差し入れで談話室に
 お酒があるのは多いですけれど、普段誰が消化してるのでしょうか?)
(グラシアとミーザはそこそこ飲むかな。 クロウは結構飲めるよ。
 メーゼが付き合わされることも多いけど、彼女は意外と飲めない)
(・・意外ですわ。 メーゼ様が)
(ほんとね、僕もそう思う)






7月頃のセラとスイリ。 十二使の名前がよく出てくる。


セラ・セイクリッド
  聖職者衣装の十二使『真栄』 十二使関連の仕事の話が多かったから、
  日常会話は初めてかもしれない。 誕生日来てない24歳。

スイリ・ミゼル
  セラの前に加入してる十二使『知聖』 情報屋27歳。
  最近ようやく登場作品数増えて来たなって思う。

ミザキ・セレジェイラ
  オネエの十二使『樹花』 春頃はセラとシルワの森の討伐依頼へ。

メーゼ・グアルティエ
  最早お馴染み十二使『夜桜』 酒の強さは人並み。 意外って言われる。

クロウカシス・アーグルム
  こっちも最早お馴染み十二使『氷軌』 酒はあれば飲む、基本酔わない。

ティグレ・プロイビート
  ようやく異名決まった十二使『拳剛』 酒は壊滅的なレベルで飲めない。

グラシア・クウェイント
  未来軸ではちょっとアレな十二使『八駆』 酒は楽しいうちはいくらでも





 

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